第7話


 現在は、夕方。

 暗くなる前にハンクがモンスターにどこまで対応出来るかを確認しておきたい。


 アパートの2階の廊下から、双眼鏡を手にしてゴブリンを探している。

 周りの部屋には人がいないのか静寂に包まれている。


 静寂の中……やっと、1匹で道路を彷徨いているゴブリンを双眼鏡ごしに見つけた。

 大きく息を吸って、覚悟を決める。


「よし……行くか。」


『…………君主。……気をつけて…………。』


 マンションの2階廊下の俺の隣で待機していたハンクが、一緒に1階への階段を降りマイスペースのギリギリまで着いてきた。

 ただ、彼はこれ以上進めない。


「ハンクは、そこで隠れて待機していてくれ。」


『……承知した。』



 周りを警戒しながら、道路を慎重に進み先程目視したゴブリンを探す。

 数分後、やっと目的のゴブリンを見つけた。

 帰り道を目視して他のモンスターがいない事を再確認する。


 ポケットに詰めていた石ころをゴブリン目掛けて投げつける。

 勢いよく飛んだ石ころがゴブリンの頭に命中するとゴブリンは、こっちを振り向き獲物を発見したかの如く向かって来た。


『ギギィーーーーー!!!』


 俺は一目散に拠点へ向かって走り出す。


「はぁ、はぁ……。やっと着いた。 っえ!」


 マイスペースまであと10mとの場所で、目の前の道路の脇道から1匹のゴブリンが現れた。

 後ろからは、石ころを投げつけたゴブリンが迫ってくる。

 目の前には別のゴブリンがいる……。


 どうする…………。


 俺は直ぐに上着を脱いで左手に持つ。

 そして、右手はポケットの石ころをありったけ掴み走りながら目の前のゴブリンへ向けて投げつけた。


 俺が牽制で投げつけた複数の石ころを目の前のゴブリンは、両腕を顔の前へ上げてガードする。

 その隙きに上着を投網漁の様にして投げてゴブリンに被せた。

 上手くゴブリンに被さり、目の前のゴブリンはあたふたしている。

 そのゴブリンの横を俺は全力でマイスペースへ向かって駆け抜けた。


 数秒の出来事だったが、数十分にも感じる時間だった。

 心臓の音が周りに聞こえているんじゃないかと言うほど波打っている。


 『ギィギィーーーー。』


 後ろを振り返ると2匹のゴブリンがこちらへ向かって迫ってくる。


「ハンクよろしく!」


『…………承知した。』


 ゴブリンが俺の所まで来ることは無かった。

 俺とゴブリンの間に入る様にしてハンクが剣と盾を構えて現れる。


 心配していたのが嘘かのようにハンクは圧倒的に強かった。


 ハンクは迫ってくる先頭のゴブリンが振り下ろす棍棒をゴブリンごと盾で払い除けた。

 更に2匹目のゴブリンに対してハンクは一歩踏み出すと同時に剣を振り下ろすとゴブリンは真っ二つになった。

 先頭のゴブリンはハンクの盾の払い除けだけで首の骨が折れたのか絶命していた。


「…………つ、強いな。 圧倒的だ。」


 戦闘が終了すると近場に隠れていた秋実さんが姿を表した。


「ハンクさんって本当に強いですね。最強の前衛って感じです。」


「ああ、ここまで強いとは正直思わなかった。 ……流石だな。」


「星が何ですか??」


 口が滑ったと思ったが、秋実さんとはこのまま一緒に行動する気がするので、スキルの情報を更に明かした。


「ハンクの強さ見たいなものです。 配下には希少度…レア度?って言った方が分かりやすいですかね。 配下にはそのレア度が設定されていて、ハンクは☆2つだったんです。」


「そうなんですね。……個々って事は?」


「……はい。配下は増やせる見たいです。ただし、上限があります。」


「ハンクさんの様な配下が大勢…………それは完全なチート野郎じゃないですか……。」


「そうかも知れませんが、マイスペースだけの限定的な力ですから!!それに俺自身は強くなる訳ではないです。今後、俺自身も徐々に鍛えて行こうかと思ってます。」


 俺達はゴブリンが消えた跡に残った小さな結晶(魔石)拾って部屋に戻った。



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