第8話




 夜になった。

 日があるうちにアパートの廊下や敷地内には、モンスターがいない事は確認している。


 部屋の照明は、消して目立たないようにしている。

 廊下やベランダから周辺を確認すると意外と電気が付いていることが気になった。ちらほらと光が漏れている家や集合住宅が見受けられる。


 想像するに照明が付いている主な理由はこんなところだろう。

 ・モンスターの出現で照明を付けたまま慌てて避難した場合。

 ・時間設定により街頭や集合住宅などの照明が点灯する場合。

 ・大規模な避難所や拠点の場合。


 どちらにしても、夜に部屋の照明を付けるのは悪手だと思う。

 モンスター達も眠るだろうが、光に反応して集まって来る可能性もある。

 それこそ夜の光に群がる虫の如く……。

 ただし、街全体(街頭などもあり)がある程度明るいなら、部屋の電気を付けていても目立たないかもしれないが…。



 そして、重要なのは、電気・ガス・水道がまだ使用できている事だ。

 ただ、いつ切れるか分からない。バスタブに水を溜めたり、空きのペットボトルに飲料水を保管している。




 テレビでは政府やテレビ局の状況・方針・これまでの動きなどについて、報じられている。また、ネット配信などでも様々な情報が上がっている。秋実さんと集めた内容を簡単にまとめるとこうだ。


 <政府>

 ・内閣総理大臣の全責任で、審査会に掛けず特殊災害対策省(特災省とくさいしょう)を強制設立。

 ・特災省の元、警察署・消防署を拠点とした討伐部隊を編成。

 ・討伐部隊は、人命救助およびライフラインの確保を優先的に実施。


 <テレビ局>

 ・全世界で強力な軍事兵器(核兵器、ミサイル、爆弾類)が使用不可となった状況を報道。(猟銃や鉄砲は使用可能)

 ・各局で独自の討伐部隊を設立。※女子アナもスキル能力により適材適所へ配置

 ・民間人に対し討伐隊員を募集。


 <各地域>

 ・自衛団・チーム・団体(ギルド)の募集及び設立。

  ※回復役が重宝されている模様。

 ・戦闘情報:レベルが上がると運動能力、スキル能力が上昇する。


 日本の総理大臣もヤるときはやるようだ。今回は某国大統領の様な決断力だ。政府内上層部にもラノベファンがいるのだろうか。



「日本政府も結構柔軟に対応しましたね。」


「それ私も思いました!まさか、数時間で特殊災害対策省を設立して、討伐部隊を編成するなんて驚きです。」


「…………もしかすると、事前に何か知っていた?って事は無いですよね?」


「う〜〜〜ん、どうでしょうか。それだったら、もっと事前に対策が取られているんでは無いでしょうか。」


「確かにそれはありますが、今までの経験からすると迅速過ぎてちょっと……。」


 秋実さんも「うんうん。」と頭を縦に振っている。


「まだ、ライフラインが生きているのは幸いですが、今後どうなるのか分かりません。最悪の事態を想定して、やれる対策を取っておきましょう!」


「そうですね。分かりました…………。」


 肯定してくれいるが、秋実さんの歯切れがちょっと悪かった。


「何か心配な点はありますか?」


「……着替えや、お風呂などが…………(冬夜さんに汗臭いとか思われたら、生きて行けないよぉ〜〜〜〜)。」


「確かに女性にとっては、死活問題ですね……。」


 俺は秋実さんの匂いだったら全然気にしないのだが、逆に嗅ぎたい……。


「…………変な事考えてませんよね?」


「勿論してないです。 現状なら政府が頑張ってくれているようですし、今日はお風呂に入っても良いんじゃないでしょうか。 ただ、何が起こるか分かりませんので、長風呂は禁止でお願いします。」


「本当ですか!分かりました。」


 秋実さんは満面の笑みを浮かべてお風呂に向かった。なお、衣類は洗濯し乾燥機で乾かしていた。


 ここで服の問題も浮上してきたのだ。

 とりあえず、俺の服の中から着れそうな物を適当に渡してある。

 あとは、最悪このアパートの別室から拝借するか……それは本当に最悪のパターンだな。



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