第123話


 静かな会議室の中、キュッキュとホワイトボードへ丁寧な字で要点がまとめられていく。


 題目は【 仲間の新規獲得 】である。



 ここ最近になって、防壁の外側に人が集まりだしたのである。日を追う毎に人が集まり、門をドンドンと叩いて入れて欲しいと要求(懇願)する人が増えた。


 配下には防壁上から『上層部へ返答を求めるから、暫く待て。』と返答するように指示した。


 あまり人が集まり過ぎて集団となり、過激な行動を起こされる前にどうすべきか方針を固めることにしたのだ。



 大筋は、俺が思っていた方向で落ち着いた。一部の配下からは、信用が置けないから排除すべきなどとの過激な発言も出ていたが……。


 <大方針>

 面接(【悪意察知】スキル、【審議】スキルの確認)で篩に掛ける。

 面接に合格した者は、第二防壁に招き入れる事にした。

 ただし、第一防壁内のマンションへの入居はNGとした。

 代わりに第二防壁内に別のマンションを新設してそこへ住んで貰う事にした。


 そして、面接で不合格者になった者は、―――――とすることになった。



 なお、合格者をすぐにマンション内に住まわせるか否かで、意見が割れた。

 最終的には、配下含めた住民全員による投票によって決めた。


 投票率100%で、約7:3で今の結果となった。



 ―――――――――――――――



 春香が冬夜の拠点へ到着して、30分後。


 正門を開いて、武装した配下達30人ほどと共に防壁の外側へ出た。


 門が動いた事に皆が一瞬静まり返り、そして、その中の一人であるアークが大声で皆に聞こえるように叫んだ。


『この【(そう、冬夜達の拠点の名称だ。)】に住みたい者は、ここに1列に並んでくれ。これから簡単な面接を受けて貰って、この拠点に入る資格がある者か否かを判断させて貰う。判断基準は、【信用出来る人物か否か】たったそれだけだ!!』


 その声が発せられる中、別の1人が手に持った棒を地面に押し当てて、歩きながら長い線を描き始めた。


 また、別の1人は、整列を促すように声を発する。


『順番は合否に全く関係ないから、揉めないように静かに並んで頂戴。こんな並ぶこともまともに出来ずに揉めている様では、面接を受ける前に帰って頂きますので、よろしくお願いします。』



 周りの人々からは、色々な質問が飛び交っている。


「その面接ってどんな内容なんですか?」

「俺は剣術スキルの相当レベルが高いが、面接をパスして用心棒に雇ってみないか!?」

「判断基準は信用出来るか否かって言ってるが、誰が判断するのですか?主観的に判断するなら、不公平も有るんじゃない?」

「何の権限でそんな事をやってるんだ!全員を中に入れてくれても良いじゃないか!」

「お兄〜〜さ〜〜ん。良いことしてあげるから、中に入れてくれないかしら?色んな意味で♡」

「なんで俺は前回不合格だったんだ!明確な理由を教えろ!」


 そんな雑音が飛び交う中、再度、アークが叫んだ。


『静粛に、静粛にしてくれ!これから俺のこの時計で10分以内に列へ並ばなかった者は、不合格とする。では始める、よーいスタート。』



 ガヤガヤとなりながらも、一斉に500人ほどの人が我先にと列へ並び始めるのだった。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆


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