第122話 2033年12月中旬頃 ※三人称視点
<三人称視点>
彩り豊かだった木々が徐々に葉を散らしていく冬。日の入りも早くなり、瞬く間に暗い静かな夜がやって来る。
そんな厳しい冬の寒さが既に始まっている。
吐く息は、冬の寒さに晒されて口を出た途端に水蒸気から水滴に変わり白くなる。手は、冷たい空気を諸に受けて悴んでいる。
そんな中、千葉県の某山中にある10m以上の頑丈な外壁の周りには、数百人もの人々が集まっていた。
それは、ここ一連のモンスターの侵略にほぼ無傷で耐え抜いたとの噂が出ていたからだった。
そして、また1人の男が餌に群がる蟻のようにこの拠点を訪れてた。
「な、な、何なんだよこの外壁は………。風の噂なんて尾鰭が付いてどうせ大したこと無いと思っていたが、噂以上の異様さだな……俺もここに入れて貰えれば、安泰だな。」
男は、外壁の近くで焚き火をして温まって雑談している5人の集団へ近づき、情報収集を始めた。
「こんにちは。俺はさっきここに着いたばかりなのですが、どうして皆さんは中に入らないのですか?」
5人は一瞬話を止めてその男を見たが、興味が無さそうにして、話をし始めた。その中の年配の1人が、仕方ないかとの表情をしつつ返答した。
「……そりゃあ、すぐに中に入れるなら入ってるわ。ただ、面接を受けて合格しないと入れてくれんのだよ。ワシ等も昨日やっとここまで辿り着いたところだ。」
「……その面接ってのは、いつ頃あるのか分かりますか?」
「ワシも周りの人に聞いた情報だが、周期的には今日あるらしいぞ。」
「本当ですか!(よっしゃーツイてる。)」
「ワシも聞いた話だから、間違っているかもしれんぞ。」
「わかりました。それでもありがとうございます。 ……それにしても、結構外に人が居ますけどそんなに難しい面接なんでしょうか?」
「………ワシも受けた事が無いから、難易度や内容までは知らんよ。周りに人がいるのは、不合格だった者が諦め切れずに屯っているんだろうよ。……誰だってこんな屈強な外壁があれば、肖りたいよ………。」
「………そりゃ、そうですよね。(まあ、俺はアンタラとは違って大丈夫だと思うけどね。なんたって、風魔法スキルで、レベル11まで上がっているからな。即戦力だよ!)」
男は、5人組から遠ざかると、また別の集団へ声を掛けて、面接のヒントになる情報を集め続けるのだった。
また1人。また1人。と人が集まる中、秋田から逃げ延びてきた1つの集団もあった。
「春香さんの知り合いがいる拠点って………、本当にここで合ってるんですか?」
皆の視線が一気に春香に集まる。
「………は、はい。そのはずです……。」
「本当にこんな強固な外壁がある……凄い拠点の人が知り合いなの? 何か騙されていないわよね……。」
この集団のなんかに希望と同時に、不安を抱く者も多少いたのだった。また、春香の美しさを妬んでいる一部の女性からは、陥れるような疑いの言葉も飛ぶ。
「根暗な春香が、秋田からこんな遠く離れた千葉に知り合いが本当にいるの?適当な事を行って、私達をこんな所まで連れて来て何かさせるつもり!?」「そうよ、怪しいわ。」「正直に言いなさいよ。」
「………で、でも、メールでは、ここだって……。」
「メール? 第一そのメール(通信魔導具)の情報が本当だって、どうやって証明するのよ。」
「………で、でも………。」
春香は、彼女等の圧に押されて、それ以上言葉を発することが出来なくなってしまった。しかし、春香に代わって逆に美少女の春香に興味を示す一部の男性からは、フォローが入る。
「これは、皆で決めた結果だろ!春香さんが情報提供してくれたけど、複数ある選択肢から、自分たちが選択した結果だろ。 そんなに不安なら、自分達だけでこれから秋田の別の拠点へ行けば良いだろ!」
「……そ、それは。」
「皆も、もし不安なら、別の場所へ移ることも可能だからどうするか、再度良く考えておいてくれ。」
その後、春香は冬夜へ長文メールを送るのだった。
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