第73話 ※三人称視点


 <三人称視点>


 聖域都市パラディスでは、お金の代わりに魔石が物品などの取引に使われている。

 これには、異世界のお金(貨幣)を得るために魔石が使われているからとの理由があった。そのため、異世界と交流のあるパラディスでは、お金の代わりに魔石が価値を持っている。


 そして、パラディスでは、第三層に小規模の市場が開かれて、手作りで作った様々な道具や日用品などが販売されており、その代金として魔石が使われていた。


 そんな表の世界と別に第四層では裏で闇に隠れて賭博・風俗・薬物など様々な商売がされている。



「なあ、ちゃんと口と胸を使ってコレを大きくさせろよ。歯を立てるとまたこの拳で殴る事になるから、そんな事俺にさせるなよ。」


「……っぅう。」


「やりゃあ、出来るじゃねーか。お前、可愛いしこの仕事の才能あるぞ。ぐはははぁ。」


「じゃあ、そろそろ本番だなぁ。」


「いやあぁぁーーーー。」ボゴッ。


「うっせ〜な。返す金が無いなら、こうやって仕事を与えてやってるんだ、ちゃんとやってくれよ。まあ、今日はちゃんと働けるか練習だから、俺以外にも何にも居るからよろしくな。」


 その部屋からは、一晩中安いベッドの軋む音が響くのだった……。



 そして、その闇の商売を行っているグループの一つが、櫻鉄組さくらてつぐみである。櫻鉄組は、新谷と加賀と関わりがある仲介業者の上位組織であった。


 賭博などで借金漬けにさせられた若い女たちが、風俗嬢としてタダ同然で働かされていた。賭博場も運営しており、イカサマによりカモを効率的に借金漬けにして、利益を着服していた。


 新谷と加賀達はレアな収納スキルを持っていたので、マシな労働環境で最低限の生活が出来ていた。これが、在り来りな戦闘スキルだった場合、過酷な労働条件で扱き使われる事になっていただろう。



「新谷、今回は異世界への運搬の仕事が有るがどうする?今回は5人の収納スキル持ちに話をするつもりだ。此処だけの話、お前らの為に最後の1枠を残してあるんだ。報酬はお前たちだから俺が上に掛け合ってやって、今までの1.5倍出せるぞ。やるよな!?」


 実は、この仲介業者の紹介者も報酬を中抜きしている1人である。

 櫻鉄組には、顧客との契約料の6割を納めるだけで良かった。しかし、この紹介者は中抜きして3割着服し、新谷と加賀に1割ほどしか払っていなかった。


「………本当ですか!ありがとうございます。だったら是非やらせて頂きます。今回は、報酬が増えたので、護衛を雇おうと思います。」


「前回が散々だったっす……。」


 新谷と加賀の2人は、相当酷い報酬の着服をされている事を知っているが、言葉に出さずに淡々と話しを進めた。


「そうだな。お前等はたしか前回の異世界への運搬で、かなり危険な目に合ったらしいな……。俺もかなり心配したんだ……だが無事に帰ってきてくれて何よりだ!」


 仲介業者は口で心配しているが、心の底では彼等のことなど全然心配していない。強いて言えば、儲けのコマが1つ無くなって残念程度である。


「ありがとうございます。今回は5人と大規模なんですね。何かあったんですか?」


「いや何でも最近美味い野菜が入手出来るようになって、それを大々的に異世界へ売り込もうって話らしい。ちょうど、都市からお偉いさんが来るとかで、それに合わせて計画していたらしい。俺も詳しい事はよく知らん。」


 仲介業者は、この野菜を異世界の町へ売り込む使命を櫻鉄組から受けている。そのため、5人の運搬人を雇って何としてでも1人は、町へ野菜を届ける手立てを取ったのだ。


「そうですか、じゃあ何としても成功させないといけないですね。5人もいれば護衛も含めて大所帯になり、安心できそうです。」


「ああ、よろしく頼む。出発は明後日の朝8時だ。収納スキル持ちは出発の1時間前にここに集合して荷物の積み込みを実施し、朝8時ちょうどにここを出発する。護衛のメンバーは、30分前程に揃ってくれれば良い。」


「わかりました。よろしくお願いしますっす。」


 新谷と加賀は、その後に冬夜達にこの事を伝えた。

 冬夜達は、二つ返事で異世界への同行を承諾し、直ぐに準備に取り掛かった。



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