第25話
チームリーダーの突然の死亡に全員呆然としている。
崩れ落ち放心状態の斉藤くんだが、怒りの方が優っておりどうにか口を開いた。
「ハンクさん、どうしてアンタが…賢治を…………。どうしてなんだよ!!」
斉藤くんがハンクを睨み付ける。
ハンクはその場で目を閉じて橘くんに向かって黙祷しているようだった。
『………………。』
そこで俺がアークに尋ねた。
「アークこれはどういう事だ?」
『冬夜殿。では、ハンクに代わって私から説明します。私たち2人がこの場に来た時、既に橘殿は何者かに刺されており虫の息でした。これ以上彼を苦しませるのは酷だと思いハンクが橘殿を介錯した次第です。 それが証拠に彼の腹周りから血が出て服が赤く染まっております。致死量の血溜まりが出来ているのもその為でしょう。』
ジェイドが突然会話に入ってきた。
『犯人はたぶん内部の人間でしょうね!外部の犯行なら、彼は何らかの合図や抜刀していたはずです。ですが、その痕跡が見えません。その為、顔見知りの犯行の可能性が高いです。』
そこへ橘くんのチームの誰かが反論する。
「外部の犯行でも、不意打ちなら橘さんは何も出来なかった可能性はある!内部の犯行と決めつけるのはおかしいでしょ!」
『確かに不意打ちならあり得ますね。ただ、ここまで何人もの目をくぐり抜けて来れるでしょうか?また、犯行直後も誰にも見つからずに脱出するのは、難しいはずです。しかもこんなに滅多刺しにして、血痕が落ちて無いのは不自然です。』
「確かにジェイドの説もあり得るが、まだ内部の犯行と決めつけるのは……。」
『まあ、冬夜様がそう言うなら控えますが、外部の犯行の場合、動機が不明です。何でわざわざ彼だったのでしょうか? 誰でも良いなら、もっと外壁付近の人を狙えば良かったはずです……、彼を初めからターゲットにしていたと考えるのがしっくり来ます。そうなると、彼が重要なリーダーである事を知っている内部の………まあ、話は尽きませんので、私からはこの辺りにしておきます。』
「だが内部の犯行となると、アークさんとハンクさんが1番怪しくないか? そもそも、橘さんのトドメを刺したのはハンクさんだ!腹部の傷も彼らがやった可能性があるじゃないか?」
確かに状況証拠的には、一番怪しいのはハンクとアークなのだが、俺の命令にアークが答えたので、さっきの話は嘘で無い。
そうなると、橘くん達のチーム内に犯人がいる事になるな………、これは結構厄介だぞ。
俺がいくらハンク達の無実を訴えても所詮は同じ仲間だから、庇っていると思われる。
そうなると、犯人を見つけないといけないが………そんなの名探偵コナ◯じゃないし、専門外過ぎるのでお手上げだ。
どんどんと互いに疑心暗鬼になって、最悪潰し合う事になりかねない……。
「だったら、アークかハンクがその刃物を持っているはずだし、複数回刺すとなると当然返り血も浴びているはずだが、それは見当たらない。そもそも、アークとハンクが橘くんを襲う動機が無い。」
「それは、こっちの戦力が大きくなって乗っ取られる事を恐れてたんじゃ無いのか?」
「だったら、わざわざ橘くん達の戦力を強化するような戦闘の手解きなんてしないだろう。」
「それはそうだけど……。」
「そもそも、アーク達だったらわざわざジェイドが内部の犯行だって言わないだろう!外部の線に持っていった方が疑われるリスクも減るし。」
「だがそれでは納得がいかない。」
これでは埒が開かないな。
そんな時、沈黙していた斉藤くんが口を開いた。
「まず、一旦落ち着かないか……、賢治をこのままの状態にしてられない……。」
皆んなもその意味を理解して、橘くんの遺体を埋葬するのだった。
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