第109話 ※三人称視点



 <三人称視点>


 西防壁の状況は絶望的だった。


 開戦当初は、モンスター100に対して、冬夜の配下14人(1人死亡)で戦っていた。


 ネヒルルが援軍として冬夜の配下を9人引き連れて来たため、どうにか抵抗出来ているが、食い止めるには至らなかった。


 ネヒルル2人の扱うバリスタが主力となり、勢い良く敵を貫き、一矢で一気に3体のゴブリンを葬りさる。しかし、どう考えても多勢に無勢である。モンスターを10倒す間に冬夜の配下が1人、2人と殺られていく。


 どうにか半数以上の60のモンスターを倒しきった時には、既に冬夜の配下はネヒルル1人となっていた……。


 ここまでの戦いで冬夜の配下は、互いを助けるために、ときには特攻隊となり敵の中に自分の身を投じてその命を散らした。


 そして、ネヒルルはバリスタでオーガの頭を貫くと、次の矢を装填する前に西防壁上へ登ってきたゴブリン達に滅多刺しにされて死亡した。


『冬夜様、ごめんね。西……防壁…を……守れ……な…。』


 ネヒルルは声にもならない声で呟くとそのまま光と共に消え冬夜のカードへと戻った。



 その後、冬夜の配下が居なくなった西防壁をモンスター約40程は登り次々と第二防壁内に入り込んで行った。


 モンスター達は、物を破壊する本能が働くのか、目の前にある田んぼを避ける事無く直進して行き植わっている稲を踏み荒らしながら、冬夜の本拠地のマンションへ向かって歩みを進めた。汚れるのが嫌なら、避けようと思えば十分対応出来るが……それをしないのであった。


 ただ、その行動が裏目に出たのか、モンスター達は泥濘む田んぼの中を歩いている際に、頭上から魔法・弓矢などの攻撃を受け、泥に足を取られて身動きが鈍る中次々と討たれた。




 東防壁のモンスターを討伐した冬夜達が、西防壁の応援に向かって行動していたのだ。


 第一防壁上(マンション周りの防壁)に冬夜達の姿がある。

 冬夜の配下を除く日本人の仲間は、皆一様に西防壁が突破されて、モンスターに侵入を許したことに焦りを感じている。


 ただ、塞ぎ込んでいても仕方ないとばかりに、夏が声を上げて皆を鼓舞した。


「皆ここが正念場よ。西防壁が突破されても私達は生きているわ!泥んこ遊びしているお馬鹿さん達モンスターなんて恰好の的よ。一気に退治しちゃいましょう!!」


 続けて、雷魔法使いのカナリィーが叫ぶ。


『夏っちの言う通り、マジであーしの魔法でチョチョイのチョイっしょ!皆の分が残んなかったらごめんっしょ。 イクよ、サンダーーーーーボルトーーーー!!』


 カナリィーが放った雷撃が田んぼの中にいるオーガに直撃すると、更に二次災害として雷撃は水を伝わって周りのモンスターを次々に黒焦げにするのだった。


『ごめん………ちょっと張り切り……過ぎちゃった。マジ……力を使いして動けないっしょ…。』


 カナリィーは今まで以上に無理をして魔法を使ったため、胸を抑える様にして蹲った。


 ただ、このカナリィーの一撃で40ほどいたモンスターは殆どが消え失せたのだった。


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