第100話



 魔道具店を出た俺は先程一緒に通信用魔道具を購入した東松野さん町中を歩いている。


 東松野 春香(ひかしまつの はるか)。

 年齢は25歳、身長160cm、痩せ型(ぺちゃパイ)。

 黒髪ロングヘアーの美少女。物静かで、落ち着きのある性格。




「東松野さんは秋田なのか。結構遠い所からって、転送陣を経ての移動だからそう言う訳でも無いのか。」


「うん、そうなる。」


「いつ頃からガマズミ町に来始めたの?」


「本当に最近。まだ2回目。」


「そっか、俺たちも1ヶ月ほど前から来始めたのばかり何だ。」


「冬夜も仲間と一緒に来たの?」


「そうだよ。10人くらいで来てる。そっちも?」


「うん、私達も10人ほどで来てる。

 そうだ!一度通信用魔道具のテストをしたいから相手して!」


「おう、良いね。やろうっか。」



 この通信用魔道具は遠くの通信用魔道具に文字を送れる。要はメールが出来るのだ!

 ただ、通信は燃費が悪い。1回使用するのに微小魔石を1個消費するのだ(銀貨1枚ほど)。こっちの価格で1送信1万円だ…。受信するのは、通信機に魔石を入れておけば無償らしい。


 日本人ではすぐに微小魔石を手に入れられるが、異世界だと燃費が悪くて貴族や富裕層にしか普及していないらしい。なお、戦争などではバンバン使用されてる様だ。


 そして、1台の通信機には10件まで相手の端末を登録出来るので、早速俺達は互いの通信機を登録した。



 なお、早速東松野さんからメール(通信用魔道具の連絡)が入った。


「………。」


 あまりのギャップに戸惑ってしまった。


『冬夜さん

 私、人見知りで上手く喋れなくてごめんなさい。だけど、メールならば普通にやり取り出来るから、よろしくお願いします。

 そう言えば、まだ余り自己紹介出来てませんでしたね。改めて、東松野春香です。歳は25歳です。――――――――――。

 そして出来れば、日本に戻ってからも周辺地域の変化など色々と情報交換させて下さい。』


「このメールって……東松野さんだよね?」


 俺は自分の通信機の画面を彼女へ見せながら問いかけた。すると彼女は、少し恥ずかしそうにコクリと頷くのだった。そして、俺も彼女にメールを返信するのだった。





 俺にメル友が出来た。かなりギャップのある人であったが、悪い人では無さそうだ。彼女はこんな世界になってメールが使えなくなり、相当なストレスを抱えていたようだった。


 東松野さんとメル友になってから、毎日長文のメールが入ってくる。ちゃんと、地球でも通信魔道具は使用できた。


 それにより、色々と秋田の情報を得ることが出来ているので助かる。秋田も千葉とあまり変わりがない状況で、ライフラインはストップしている。そんな中、千葉で言う聖域都市パラディスの様な安全地帯を持つ都市がいくつか点在している状況だ。


 なお、安全地帯都市へ移住する人もいるが、多くの人達は周辺地域での仲間意識が高く、周辺地域毎にチームを形成しているようだ。東松野さんは、合併を行い400人程度のチームに属している。


 彼女とメールのやり取りをしている関係で、通信魔道具でわかった事が1つあった。それは異世界と地球の間では通信が不可能という事だ。互いに同じ空間に居ないと送ったメールは届かないようだ。送ったメールが消える訳ではなく、通信魔道具が同じ空間になると遅れてメールは届いた。


 そして、この通信魔道具は地球や異世界で大活躍しており、追加で数十台購入するほどだった。電話のように会話が出来ないが、瞬時に連絡が取り合える魔道具は必要不可欠だ。


 特にスマホが当たり前となっていた地球人にとって、この通信用魔道具はその後爆発的に流行った。



 まだ先の話だが、異世界で通信魔道具の専門店が各地に出来て、更に特別仕様として装飾された通信魔道具まで販売される事になる。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


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