第76話



 先行していたキーシャが突如現れた。


『冬夜様、この200m先にオーガ1匹、オーク3匹、他10匹ほどの敵影が見えました。その周辺は、戦闘の痕跡があり人間の遺体が6ほどありました。多分、服装や装備的に日本人が襲われたのだと思います。』


 一同に緊張が走る。


「ここから迂回して進めるようなルートはありますか?」


「知らないですね……。未開のルートですが、大体の方向を把握していますので、大回りして迂回しましょう。」


「まあ、それしか無いでしょうね。キーシャ悪いがまた先行して状況を確認してくれ。」


『承知しました。では行ってきます。』


 キーシャは迂回する方面へ消えて行った。



『それにしても、安全だと言われているルートにこうもモンスターが出現するとは……加賀殿達が前回ここを訪れたのはいつ頃ですか?』


 アークが尋ねて、加賀さんが答える。


「2週間以上前だったと思います。何でですか?」


『本当にこのルートが安全なのかと思いまして。というのは、加賀殿が通った2週間前も襲われて、今回も同じ様な場所で襲われたとなると何かあると考えるのが必然かと……。』


「こっちのモンスター達にこのルートが狩り場として認識された?という事でしょうか?」


『あくまで仮説ですが、十分に考えられる事かと思います。加賀殿達が異世界の運搬業を受けなくても、他の方はここへ派遣されていた可能性はありますよね?』


「まあ、あの仲介業者は1週間に1〜2度ほど異世界への運搬の仕事を受けていたと思います。被害が出て頻度が下がったとしても、誰かしらは異世界への貿易に出ていると思います。」


 話し合いは絶えないが、ここに留まって日が暮れる方が大変な事態に陥る可能性があるので俺達はキーシャが発ってから時間を置かずに出発した。



 暫く進むとまたしてもキーシャが戻って来た。


『この周辺を探査しましたが、網を張ったように等間隔にモンスターが配置されています。モンスターの数や種類に違いはあれど人為的な意思を感じます……。』


「モンスターが連携して人を狩るなんて事あるのか?」


 俺の問にアークが答える。


『我々もそんな経験はございません。とにかく今の状況をどうにかしないといけません。一度戻るか、それともこのまま進むかを決断すべきです。』


「………一旦引いても、今後この状況が改善されるとは限らないのでこのまま進もうと思う。それにこの戦力なら実質突破は可能かと思うが、お前らはどう思う?」


『妾はこの戦力なら問題ないと思うのじゃ。』

『……………愚問だ………問題無い。』

『私の盾術もレベルが上がりましたので、オーガ程度なら払い除けて見せます。』


 ジーニャ、ハンク、ジェイドが答える。その他も問題無いと、俺の問い掛けに肯定してくれた。



 キーシャが先導してくれたルートには、強敵であるオーガの姿が無かった。オーク3匹、ゴブリン6匹、ホブゴブリン2匹、ストーンラビット4匹だった。


 ・ストーンラビット : 体長は60cmほど。石の兜を被ったかの様に頭だけが石で覆われている肉食のウサギ。飛び跳ねる突進による一撃は、大人の野球バットのフルスイングと同等の衝撃である。


 いよいよ開戦である。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


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