第77話


 モンスター達はこちらが近づいていることに気づいていない。


 網を張ったように等間隔にモンスターが配置されていると言うことは、戦闘音が大きければモンスターが寄って来る可能性が有るということだ。なるべく大きな音を立てずに戦う必要がある。


「新谷さん達は、後衛陣の近くに居て絶対に前線に出て来ないで下さい。

 俺達はいつも通り後衛の攻撃を合図に戦闘を開始する。ジーニャ達は攻撃音の低い魔法を基本的に使ってくれ。あと、ここから撤退するモンスターがいればそいつ等を狙い撃ちするようにしてくれ。

 前衛は、基本的にハンクとジェイドの指示に従ってくれ。俺は遊撃で動くから俺のことは頭数に入れるなよ。」


 俺の指示にジェイド、ジーニャ、ガラム、エミリーが答える。


『冬夜様の強さを疑う訳では無いですが余り無理はしないで下さい。もしもの場合は、力付くでも後退させますのであしからず。』


『わかったのじゃ。妾とシード達で手前のゴブリンとホブゴブリン共に先制攻撃を仕掛けよう!』


『冬夜殿が無茶をした場合は、俺が引っ張りに行くから大丈夫だ。万が一の事など起こさないし、その場合は俺が盾となってでも守ってやる。』


『冬夜様が怪我をした場合は、私が命に変えても回復させます。皆さんが怪我をした場合は、私が近づける範囲までなるべく後退して下さい。なお、重傷の怪我はなるべく負わないようにお願いします。今の私の力ではそこまでの怪我を治すことが出来ませんので………。』


「では行くぞ!」


 ジーニャとシードの風魔法に合わせて、アーク達の弓がゴブリンとホブゴブリンを襲う。シード達の攻撃はモンスターにある程度ダメージを食らわせているが、その中でジーニャの魔法の威力だけは飛び抜けていた。

 ジーニャの風魔法のウィンドカッター(風の刃)は、ゴブリン2匹とホブゴブリン1匹の命を奪い、更に後方のオーク1匹の腕を切断するにまで至っていた。


 先制攻撃を受けたモンスター共へハンクとジェイド達が雪崩込んで行く。

 ハンクはゴブリンを相手にせずにそのまま奥のオーク達の討伐へ向かう。ジェイドはホブゴブリンへシールドアタックをぶちかまし吹き飛ばす。


 それに続き、ガラムとロイスが混乱しているゴブリンを倒していった。俺が遊撃として出動することもなく、蓋を開ければ


 意外と厄介だったのが、ストーンラビットだった。狙いが小さく、更に意外と素早いため倒し方を見つけるまで時間が掛かった。

 盾などでストーンラビットの突進を受けて、ストーンラビットの体勢が崩れた所を狩ってしまえば簡単だった。


 しかし、最後の最後でストーンラビットが1匹逃げ出しかけた。そして、ジーニャがその逃げたストーンラビットを仕留めるためにウィンドカッターで真っ二つにする所までは良かった。


 張り切りすぎたジーニャのウィンドカッターは、威力が強すぎてストーンラビットを仕留めた後も木々を2本薙ぎ倒した。


 ギィギィギィギィーーー。バダァーーーン。バダァーン。


「…………。」

『『『『『『…………。』』』』』』

『……すまぬのじゃ。』


 木が倒れる大きな音に引き寄せられるように、近くのモンスターが集まって来たのは言うまでもない。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


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