第92話
次の日に俺はクイック達を連れて聖域都市パラディスへやって来た。目的は、櫻鉄組から助け出した3人の女性達に実際に会って意志を確認する事だ。
この話を昨晩秋実さんと夏にしたら、2人も一緒に来る事になった。
正直、秋実さんはそんなに心配しなくて良いと思うのだが、新しく仲間になるかも知れない女性を知っておきたいそうだ。夏も同じ感覚らしく、ついて来る事になった。
パラディスに向かう道中の事。
「会いに行く女性達は若くて美人揃いって聞いたけど冬夜さんもそう思ったの?」と秋実さん。
夏がこっちの会話に耳を傾けている様だった。
「綺麗な人達だったのは確かだけど、そんな感情より、精神や身体の心配をする方が大きかったよ。それに秋実さんは気にしなくても良いよ。(俺には秋実さんがいるし。)」
「何ですか?最後の方が上手く聞き取れなかった。」
「何でもないですよ。」
「もう〜何?何?気になっちゃうよぉ〜。 私は冬夜さんが気にしなくて良いって言っても、魅力的な人達が増えると心配しちゃうよ。」
「だから大丈夫だって!」
などと話をするのだった。
・・・・・・・
ちょっと予定外の事が起こっていた。
ガラムからの報告がちゃんと上がって来ておらず、目の前には7人ほどの男女が居る。『あれ?言って無かったか?悪い悪い』ってな感じだ…。
3人の家族も一緒に拠点への移住を希望している様だった。結局、乗り掛かった船なので全員の意思を確認するとこになった。
家族ごとに面談を行って、スキルと人となりを確認する。それが終わると最後にクイックがする質問に『いいえ』で答えてもらった。
クイックからの質問は次の通りだ。
・生活環境を改善したいですか?
・一生懸命に働けますか?
・家族に危険が迫っている場合、命懸けで守れますか?
・自分自身を危険人物と思いますか?
第一問目は、全員が問題無かった。
第二問目、第三問目は、引っ掛かる者もいたが、その後の追加の質問を行い問題は解消された。
最後の第四問目に1人だけが追加質問をしても引っ掛かったままだった。
・上坊寺 剛(じょうぼうじ つよし)悪意察知 11歳
小学6年生ながら割としっかりとしている。ただ、彼自身は自分のことを危険人物と思っているのだ。
クイックの力を使わずに直接話す事にした。
まず、秋実さんが彼に質問を投げた。
「何で剛君は自分を危険人物と思っているの?」
「何でって……。」言い渋っている様だ。
「僕のスキルのせいだよ…。悪意察知スキルが勝手に人の事を調べちゃうんだよ!ねーちゃん達を守る分には使えるけど、見方によっては危険でしょ?」
「確かにそうかも知れないけど、お姉さん達を危険から遠ざけられるなら良いんじゃないかな?少なくとも私はそう思うよ!」
「因みに俺達は君にどう映っている?危険視されているのかな?」
ちょっと答えるのを迷っている様で、お姉さん達の方を向いて確認を取った様だ。
「はっきり言って良いわよ。その結果、どうなろうと剛のせいじゃ無いわ。」
「…分かった。
周りの外国人達は『警戒・危険』の色が見える……どっちかと言えば、危険な色の方が強い感じかな……。」
「秋実さんと夏は合ってる?」
「多分当ってるわね。『警戒』って言うより『観察』している感じだけど、彼には『警戒』って映るのね。」
「私も夏ちゃんと同じ感じかな。そこまで警戒はしていないけど気を許して居ない状況よ。」
「アーク達はどうだ?」
『私の場合、冬夜様に何か起きそうになれば、直ぐにでも相手を排除出来る様に構えているので、それが『危険』と判断されたのでしょう。』
アークは怖い事をサラっと言い放った。ただ、配下の皆は大体同じ様な事を言っている。
って事は、今後交渉をする場合や仲間を加える場合に『悪意察知スキル』と『審議スキル』を組み合わせれば、色々と振るいに掛ける事が出来そうだ。
剛は自分の事を危険人物と感じている様だが、その内容は決して危険なもので無かった。
小学生でここまで考えられるし、欲しい逸材だと思った。
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