第64話
急に俺達の周りに数人の人の姿が現れた。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!!」
人の出現に俺達は身構えて剣を抜く。
ただし、相手は攻撃をするような体勢でなく、武器を所持せずに丸腰の状態に両手を上げていた。前回ゼネブ達が会った人だろう、50代と30代の男性に見える。
そのため、俺は皆に攻撃をせず待ったを取るように指示を出す。
「急に現れてすまない。まず、そこを謝らせて欲しい。本当に申し訳無かった。」
代表者が謝罪をすると同時にもう一人の者も頭を下げた。
「いや、こちらこそすまなかった。状況的に何かあるなとは感じていたので、試させてもらった。実は、そこのエミリーは攻撃魔法が使えないので、ここら辺を消し飛ばすことが出来ないんだ。 だが、どうして姿を表した?俺達が現れた時にそのまま逃げれば良かっただろう?」
「まあ、それには色々とこちらにも事情があり、姿を表さざる得なかった……
。」
「その事情を聞いても?」
「…………。」
「では、質問を変えて、あなた達2人のスキルは隠密か?」
「…………。」
「う〜ん、何も答えてくれないなら、話が進まないのだが…。」
するとここで、エミリーが揺さぶりを掛ける。
『じゃあ、話を変えさせていただきます。お二人が姿を表したのは、そちらのお仲間を逃がすための時間稼ぎですか?』
若い方の男に少し反応があった。
一瞬であったが周りを確認するような仕草を見せて直ぐに冷静を装って誤魔化した。
「…………。」
『では、ちょっと試させて頂きますね……。ハンク、あの木に向かって暗黒剣を放って頂けますか? 冬夜様よろしいでしょうか?』
俺は男2人を見てそれとなく確認を取るが何も反応が無かった。
「まあ、良いだろう。ハンク程々にな。」
ハンクは軽く頷くと、エミリーが指示した木目掛けて暗黒剣を放った。暗黒剣とは、飛ぶ斬撃である。良く漫画で見るようなやつだ。
暗黒剣を放った後、その木は音を立てて倒れたのであった…。
「「っ………。」」
男2人はその威力に驚きを露わにしていた。
『じゃあ、ハンク次はあっちと、こっちと、そっちへ暗黒剣をお願いします。』
『…………承知した。』
ハンクが肯定すると、1人の男が口を開いた。
「ちょっと、待ってくれ。何なんだあんた達は?どうして此処にやって来たんだ?」
「っお、やっと口を開いてくれたな。まず俺の名前は、海堂冬夜。色々と想定外の事が起こって、こんな変な状況になってしまったが、俺達はここの辺りに住んでいると思われる人と貿易をしにやって来たんだ。あなた達へ危害を与えるつもりは無い。 因みに、俺達は此処から数キロ近辺に数ヶ月前から拠点を構えて自給自足の生活を送っている。」
「貿易の交渉をしに来たのに何でこんな事になるんだ?」
「いや、いざ訪問したが、人の生活していそうな雰囲気は有るが人が見えないのでは、話が始まらないので、色々と想定外の事が起きてこんな試すような状況になってしまった。すまない…。 ところで、あなた達はここで何をしているんだ?」
年配の男が話しを初めた。
「………お察しの通りです。私共は数週間ほど前からここを拠点に生活を始めました。スキルの関係上、詳しい事は説明出来ませんが、どうにか細々とやっておれます。宜しければこれ以上、私達に干渉しないで頂けないでしょうか。お願いします……。」
俺は年配の男に対して口調を改める。
「分かりました。こちらからは、干渉しないようにします。ただ、こちらは多種類の野菜を栽培しております。貿易等に興味があれば、何か連絡を下さい。それでは、俺達はこれで失礼しますね。」
「ご丁寧にありがとうございます。何かご縁があればよろしくお願いします。」
「はい、それでは。」
「キャーーーーー。」
俺達が、この場を立ち去ろうとした時、近くから女性の叫び声が聞こえてきた。
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