第52話


 拠点のあちこちを見渡すと、敵の亡骸が至る所に倒れている。

 今はそれをどうするかなどを考えている暇が無い。


 配下へ拠点を守る様に指示を出して、俺は直ぐに仙道を追った。





 暫く進むと仙道が岩を椅子がわりにして休憩していた。

 夏は地面に横たわっている。


「………まさか揚石が倒されるとはな。あいつは対人戦に関して滅法強い理由があるかなぁ。…アイツのスキルを看破したと言う事は、オマエも揚石と同じくユニークスキルか?それともクズスキルなのか……?」


 仙道の質問を無視して夏の心配をする。


「夏は無事だよな?」


「ああこの女は無事だよ。この後どうなるか分からんけどな。まあ、俺らの組織に必要なスキルを持ってたから、殺しはしない。揚石が色々と調教するつもりだったが…予定が狂ったな。俺がするしか無いか。」


「クソが…。」


 夏が言っていたが、揚石より純粋な戦闘力なら仙道が上だ。スキルのカラクリがあったから仕方なかったのだろうな。


「なあ、俺の質問には答えてくれないのか? お前はユニークスキルなのか?クズスキルなのか?」


「俺はユニークスキルだよ。普通こんな山の中にあんなマンションが建ってたら驚くだろう。アレは俺のスキルで出したんだ。」


「……期待して損したぜ。ユニークスキルだろうが、外れか。俺が聞きたかったのは、強い戦闘系のスキルかどうかだ!」


「だったら、最初からそう聞けよ。」


「っち。だったもうお前には用がない。とっとと終わらせるか。」


 そう言って、仙道は剣を抜いた。

 俺も同じく剣を抜いて、仙道と向かい合った。


 仙道の剣が一直線で俺の喉目掛けて串刺しにする様に向かってくる。俺はそれを後ろは飛び退いて避ける。


 仙道は一貫して鋭い突きの攻撃をして来るが、俺は全てその攻撃を躱す。


「おぉーーー期待以上だ。これで蜂の巣になると思ってたが……。だったらこれはどうだ?」


 今度は、上半身への突き攻撃に加えて、下半身を斬り付けてくる。まだ、仙道の動きは見えており、何とか足への攻撃も捌ききる。


 俺も隙を見て横への薙ぎ払いや突きの攻撃を繰り出すが、仙道はそれを余裕で受け止める。ただ、俺の力が強かったため俺の剣を受ける仙道は正確に受け止めてられず少し剣が押されてブレる。


 仙道はそれが気に食わなかったのか、ムキになって更に攻撃速度を増し、技も多彩になる。


 仙道の剣の技術について行けず俺の体には無数の傷が付くが、かすり傷程度だ。


 しかし、俺は時間が経過するにつれて、アドレナリンが分泌されてハイになっている。その影響もあり、少し息が上がってきたが、体が温まって動きが良くなる。


 仙道の剣は空を切り、俺の剣は徐々に仙道を捉えはじめる。


 俺の攻撃は始め仙道の薄皮一枚を削るのがやっとだったが、次第に傷の深さが変わる。完全に俺の身体能力が仙道の剣術の技術を上回り始めていた。


 30分も経つとどっちが剣の達人だか分からない状況だった。


 俺はかすり傷程度の傷を負っている。それに対して仙道は致命傷を負っていないが全身に無数の傷が出来ていた。


「何でそんな出鱈目な、下手くそな攻撃で俺が傷を負わないといけないんだ!」


「…………。」


 仙道は無数の傷口から血が流れており、徐々に動きが悪くなっていった。


 「すぅー、はぁーー、すぅー。」仙道が大きく深呼吸して精神を統一している様だ!


 来る!今まで以上のスピードで、俺の心臓目がけてフェンシングの突きの如き強烈な攻撃が飛んでくる。


 俺は体を回す様に半回転してギリギリで攻撃を躱すが、胸には真横に一線の傷が出来た。


 仙道はこの攻撃に全部の力を乗せたのか、その場で膝を着いた。そして、最後の賭けに敗れた仙道は、無様にも土下座して許しを乞いてきた。


「し、死にたくない………頼む見逃してくれ。何でもやる。 そうだ、ウチの拠点の幹部にならないか?なれば、食料は部下が持って来るし、女は好き放題出来るぞ!なぁどうだ?」


「…………。」


 俺は冷めた表情をして黙って仙道の元へ近づく。


 仙道はこれでもかと頭を地面に擦り付けている。

 こんな事をしても夏を私利私欲のために連れ去ろうとしていた……そんな相手を俺は許すことが出来ない。


 こんな世界になって、モンスターを倒し、正当防衛とは言え悪人を殺めた。精神的なショックが無いかと言えば嘘になるが、思っていたほど酷い状態に至らなかった。


 それは、この世界の影響なのか……スキルの様に何か特別な力が働いているのかは不明である。


 ただ、言えるのは、此処までされて俺はこいつ仙道を許すことが出来ないという事だ。


「頼む〜。お願いだ。(ドゴォーン)ぐがぁ……。」



 俺の足が仙道の頭を思いっきり踏み潰していた。




 ◇◆◇◆◇◆◇◆ 


メインキャラクターのイメージ画像を乗っけました。

興味あれば、御覧ください。


↓【海道 冬夜】イメージ

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330660384090676


↓【滋賀 秋実】イメージ

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330660384146629


↓【南島 夏】イメージ

https://kakuyomu.jp/my/news/16817330660384217329

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