第71話 ※2033年6月中旬頃〜




 竹光さん達が仲間に加わって、数日が経過した。


 家畜の飼育が軌道に乗れば、肉も定期的に食べられる様になるし、かなり充実した食生活が送れると思う。


 野菜みたいに家畜の成長速度促進は出来ないが、野生化した家畜を定期的に確保する事は出来ると思う。


 それに、聖域都市との貿易でも食料や日用品を確保出来るとありがたい。特に狙っているのは米だ。

 聖域都市が米の備蓄庫を占拠しているのは、この辺りでは有名なので、俺は貿易品として米を狙っている。

 今年の秋には上手くいけば米が収穫できるので、それまで時間を繋げれば良いと思っている。



 そういう訳で只今、聖域都市パラディスにいる。


 貿易交渉は秋実さん達に任せており、若松さんと交渉中だ。何とか良い条件で米をゲットして貰いたい。


 俺は秋実さんの護衛兼異世界へのルート調査だ。

 そして、何度も通っている内にどうにか第四層(1番外側)で運搬業をしている2人組と交流を持つに至った。


 太っている方が、新谷 天水(あらや てんすい)。収納スキルを取得しており、25歳。


 痩せている方が、加賀 陸斗(かが りくと)。棍術スキルを取得しており、こっちも25歳。


 ・・・・・・・・・・・


「ところで、運搬業って何を運んでるんですか?」


「食料、日用品など色々っすよ。僕の場合は他の人の収納スキルより多目に荷物を運ぶ事が出来るから、何とか2人で生活出来る感じっすよ。」


「そうそう、自分は戦闘系のスキルだったので、テンと一緒に行動できて本当に良かったと思っているんです。」


「いやいや、僕こそ収納なんてただ物を運ぶだけのスキルなので、リクと一緒じゃ無かったら、今頃ゴブリンの餌になってたっす。」


 普通に自分のスキル情報を開示しているは、大丈夫か?それなら遠慮なく色々聞いてしまおう。


「へぇ〜2人は昔からよく知っている関係なんでしょうね。」


「そんな事無いです。実際に会ったのはこんな世界になる少し前です。」


「そうっす。僕達は所謂ネトゲ繋がりっす。長い期間ゲーム上で関わりは有りましたが、実際に会ってからは間もないです。」


「そうなんですね。実は俺もネトゲにはハマってまして、色々とやってましたよ。」


「携帯でもいろんなアプリが出てますし、ゲームは日本国内でも1兆円規模の事業ですからね。我々もその売上に貢献している中の1人ですがね。」


 ――――――


「ところで、収納スキルって何でも運べるんですか?例えば生き物なんかも?」


「いや、生き物の収納は無理っす。生き物が可能ならモンスターを収納して無双できるっすね。」


「確かにそれは言えてるね。」「「アハハハ。」」2人して笑いあっている。



 こんな他愛もない話から始まり、何度も会う内に聖域都市との貿易で卸す野菜の運搬の仕事を頼むまでの関係になった。



 知り合ってから1ヶ月ほど経過するとある程度2人の性格も分かった。悪い奴ではなく、自分達に自信が無いのか弱気な部分もあるが、良い奴らである。


 ただ、あんなに誠実に働いているのに可怪しな点があった。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆ 


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