第70話



 竹光家族と鳥海家族が俺達の拠点を初めて訪れた時の話にはまだ続きがある。


「まあ、既に見えていると思いますが、あのマンションが俺達の拠点です。この第一防壁を潜ると拠点内となります。」


 この第一防壁は、壁の厚さが2mあり、高さが5mある。外側の第二防壁よりちょっとランクが落ちる。


「ただいま。」


「「お帰りなさい。」」「そちらの方々が例の方たちね。」


 秋実さんと夏がお出迎えしてくれていた。


「簡単な報告が届いていると思うが、色々あって今後、新たな仲間になるかも知れない人達を連れてきた。後で詳しい情報を共有するが、主に家畜の世話を担当してもらおうと思っている。」


「そういった方面に明るいスキルを持っているのね?」


「まあ、そうゆうことだ。」「おっと、失礼しました。こちらは、俺の仲間で滋賀秋実さんと南島夏さんです。今は各持ち場で仕事をしていたり出払ってますが、この拠点には20人以上の人が住んでます。 そして、こちらの方々が――――――。」


「「「「よろしくお願いします。」」」」


 互いに挨拶を交わしてから、秋実さん達も一緒になって拠点の案内が始まったのだった。


 ・・・・・・・・・・・


 一通り、拠点内の設備を説明し終わった。

 終始、歓喜の声が響いており、マンションの内覧会を見ている様だった。


 女性はお風呂とトイレの食い付きが一番良かった様に思える。


 お風呂は臭いの関係上仕方ないのだろう。

 後はトイレだ!こんな世界だ、家のトイレは直ぐに使えなくなる。その辺りへ用を足さないといけない為、精神的な苦痛が耐えなかったのだろうと推測する。


 皆久々のオシュレットを使用して有り難みを感じている様だ。





 それから、食堂でお茶を飲みながら一息付いている。


「一応、一通り見せましたがこれが俺達の拠点になります。もし、皆様が移住を考えるなら、各家庭に1部屋用意する形になります。まだまだ部屋が余っていますが、今後どうなるか分かりませんので、ご理解下さい。」


「もちろん、満場一致で移住をさせて頂きますので、よろしくお願いします。」


 竹光さんが代表して発言した。

 そんなに早く決断しても良いのだろうかと思うが、ここと同等以上の環境は現在中々無いだろう。

 いろいろなスキルが存在するので、全く無いとは言い難いが、それでも高ランクの設備だと自負している。


「わかりました。では、部屋を用意します。」


「「「「ありがとうございます。」」」」


「それと、これからは皆さんと同じ様に冬夜殿とお呼びした方が良いのでしょうか?」


「いやいや、それはやめて下さい。普通に『君』『さん』で結構です。」


「そうですか、わかりました。あと、我々も今から海堂君の傘下の一員にさせて頂いたので、言葉遣いも崩して頂いて結構です!」


「傘下だなんて、仲間ですよ。形式上、俺が纏めて居ますが色々と改善点が有れば遠慮なく指摘や希望を出して下さい。あと、言葉遣いは徐々に改善していきます。」


 そして秋実さんが言葉を挟む。


「冬夜さんはこう言ってますが、私達はリーダーだと思ってますので、冬夜さんの依頼などは優先的に対応をお願いします!

 そして、ここから重要な話をしますが、ここではそれぞれスキルに合った役割を決めて生活してます。飼育スキルを所有の方は家畜の世話をお願いします。その他の方は、役割決めを行いますので、自分のやれる事・得意な事を別途教えて下さい。

 皆さんも含めて意見を出しながら、何をやるのか決めて行ければと思います。」


「「「「わかりました。」」」」


 確かに楽してぬくぬくと過ごすことを見過ごす訳にはいかない。その為、各自で役割分担を決めたが俺の知らない所で色々な体制までちゃんと確立されていたのか……。流石、秋実さんは出来るキャリアウーマンだな。


「まあ、俺は寄生してぬくぬく生きている人を好まないので、役割については秋実さんと調整して下さい。

 いかに優秀であったとしても、周りに悪影響を与えるので有ればこの拠点に不要と思っています。その場合、単身で出て行くか、仲間・家族と共に出て行くかは任せますが、皆さんにはそうなって欲しくは無いので……。」


 酷だが最初から手綱を緩めてはいけないので、再度念を押しておいた。ちょっと空気が凍り付いたが必要な事だろう。


 引き篭もって生活したいと言っている俺が言うのも可笑しいが……。

 ただし、俺は唯一無二のマイスペースの役割がある!それが有れば、十分に役目を果たしているはずだ……。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

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