第89話
組長が女を人質に取ってきた。
「おいどうした? コイツがどうなっても良いのか?」
『その女がどうしたって言うんだ?別に俺達の仲間でも何でも無いぞ。好きにすれば良い良いだろう。 アークそろそろ暴れて良いよな?』とガラム。
『まあ、裏口から逃げても仲間を待機させてますし、そろそろ良いでしょう!』とアーク。
「おい、これが見えないのか、本当にこのままだとこの女が死ぬんだぞ。良いのか?」
『何か勘違いしているかも知れないから言うが、俺達は正義の味方でも何でも無いぞ。ただ、仲間が犠牲になって、お前等が許せないからやってるだけだ! なるべくなら女を死なせたくは無いが、その位の犠牲はつきものだろう、違うか?』とガラム。
「……っち。」
人質を取れば逃げられると踏んでいたのか、当てが外れて組長の顔が歪む。
アークはハンクを見て相槌をして合図を送る。
この場において俺は戦闘の指示を出さない事になっている。それは、酷い判断をせざる得ない場合に俺だと躊躇してしまう可能性があるからだ。
この人質を取られた場面でも、俺だったら道を開けていた可能性がある。そうなれば、コイツ等に逃げられて人質も連れ去られるという最悪な状況に陥っていたかも知れない。
だが、今回はアークの合図でハンクが動いて若頭を不意打ちで叩き切る。若頭は不意打ちを警戒していた様だが、ハンクの動きに全くついて来れなかった。
それと同時にアークの投げナイフが組長の腕に刺さり人質の女性は解放された。
それを見た残りの組員3人は組長を置いて裏口から逃げるが、待機していた配下によって排除されるだろう。
この場に残るは腕を押さえている組長1人だけだった。
「ぐうぅ。」
『残るは貴方だけですね。まあ、命乞いをしないだけ、うるさくなくて助かります。』とアーク。
『コイツを殺せば今回の騒動は落ち着くことで良いのじゃな?』とジーニャ。
『まあ、そうなるでしょうね。』とアーク。
その時、後ろにいた女の1人が木刀を持って組長へ近づいた。
そして、女は木刀を振りかぶり、後ろから組長の頭を殴り付けた。
「ぐあぁ。」
組長の頭から鮮血が飛ぶ。
攻撃スキルを持たない非力な女の力だったので、組長はそこまでの大怪我に至らなかった。ただ、女は恨みのこもった顔をしており、何度も何度も組長を木刀で殴るのだった。
それを見た他の女も部屋に置いてあった棒を持って組長を殴り付けた。
「テメェー等、やめろーごらぁ!」
組長は脅すように太い声をあげるが、女達の行動は止まらなかった。
組長が頭を手でガードすれば、もう1人がガラ空きの下半身を攻撃する。組長が下半身をガードすれば、女達は組長の頭を叩く。
一撃一撃が軽かったので、それが逆に仇となって、20分経ったがまだ組長は女達に殴られ続けている。
因みにアークが追加で投げナイフを飛ばし組長の両足を負傷させていた。
組長はすでに見るも無残な姿となっている。
全身から出血しており、目は片目が潰れて、鼻は折れ曲がり、前歯も折れている。更に喉は潰されて、体のそこ等中は骨折して腫れ上がり、急所の玉も潰されている。
「もう……やめて……くれ。」喉が潰れてガラガラ声だ。組長は必死になって許しを乞うように懇願してくる。
『そろそろお終いにしろ!』
そう言って、ガラムが倒れている組長の近くに寄って行く。
「だずげでぐれ………。」組長は声にならない声を出してかろうじて生きている。
『知るか、テメェが悪い。』
ガラムが組長の顔面に鉄槌をくらわせると顔面が陥没して、それがトドメとなり組長はそれ以上動かなくなった。
ガラムは自分がトドメを刺すことによって女達が殺人者になる事を防いだようだ。
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