第90話
これで仲介業者の件は、一件落着である。
新谷と加賀は2人して拠点の同じ506号室で生活して貰う事になった。
彼等の荷物はほとんど無くそれが聖域都市パラディスの第四層での普通の生活基準らしい。簡易的な小屋があって雨風を防ぐ事はできる。現代社会でいうホームレスに近い生活だろう。
新谷達に限っては収納スキルがあったので荷物を盗まれることは無かったが、部屋に荷物を置いておくと盗まれてしまう事は、日常茶飯事らしい。
この拠点(マンション)に初めて足を踏み入れた時なんて……
「海堂〜〜〜お前はこんな所にずっと住んでいたっすか!野菜の運搬依頼で何度も来てたっすが、この立派な塀の中へは入れて貰えなかったから、中がこんな天国だったなんて知らなかったっす。電気も使えるからゲームも出来るじゃないっすか!!捨てるに捨てられず、収納スキルの肥やしになってたこのプレ◯テもやれるっす!!
加賀、あとで中古屋へ行ってゲーム機器関係を片っ端から回収しに行こうっす!!」
「そうですね。電気屋で大型テレビやプロジェクター関係も回収して来ましょう!スペアとしてなるべく多目に回収が必要だと考えます!
それに忘れてはいけないのはアニメ関係も一緒です。あれは日本の宝ですので、回収が必要です。パソコン、外付けHDD等があればデータとして大量に保存も可能です。兎に角、海堂の力も借りて可能な限り資源を回収するのです!!」
「しかもあんな部屋を僕達が使っていいっすか?」
「それは自分も思っていたのですが、本当に良いのでしょうか?」
「そこは気にするな。今後の事を考えて仲間をもっと多く増やしたいと思っているので、相部屋ですまないが我慢してくれ。」
「そんなのは全然大丈夫っす。ここ数ヶ月はもっと狭い部屋に2人暮しだったっす。」
新谷は収納スキルを所持しているので、異世界の町との貿易(運搬業務)に協力してもらう事になった。
加賀は戦闘系のスキル持ちなので、防衛、物資調達、新谷の付添などを順繰りやってもらう。
拠点の食料事情が改善され始めたので、基本的に無理をしない様に週1日は休日としている。もっと働き手が増えて、余裕が出てくれば週2日は休日としたい。
新谷と加賀は、休日有りの1日約8時間労働との事で二つ返事で労働条件を受け入れてくれた。
・・・・・・・
<三人称視点>
聖域都市パラディスの某所。
数人が集まって話をしていた。
「いやぁ、今回はかなり上手く事が運びましたな。あんなにあっさりと櫻鉄組が潰れてくれるとは思わなかったですよ。」
「本当ですよ。ああ言った組織も少しはいないと第四層・第三層が上手く回らないですから、パラディスを上手く運用するには必要な潤滑油です…。しかし、あの手の組織が単独であまり力を持ち過ぎると……少々厄介になりますし、早目に芽を摘めてちょうど良かったですよ。」
「そうですな、今回の件は周りの組織への見せしめも兼ねて櫻鉄組を潰せて良かったですな。」
「それにしても、今回の君の働きは素晴らしかった。今後も期待していますよ。」
「うむ。第三層を任せられるだけはありますな!」
「お言葉は有り難いのですが、買い被りすぎです。私などまだまだです。」
4人の内3人が上役で、1人はその部下といった形だった。
「その謙虚な所もいいですよ。あなたには、今度私の所で少し働いて欲しいのですがどうですか?第二層の調達部門の取り纏めを任せようかと思っているのですよ。」
「おお、それは良い考えですな。優秀な者が育ってくれればワシ達も安泰です。」
この3人は聖域都市パラディスの第一層を纏めている人達の一部だ。この部下は、この申し出を『受ける』しか答えようがなかった。
「……わかりました。是非やらせて頂きます。」
第二層となれば、食料のランクもかなり上がってくる。今までより権力を持てるが、仕事が大変になるのは明らかだった為、部下はこの申し入れを引き受けたくなかった。
「じゃあ、よろしく頼むよ、若松くん。」
そう、この櫻鉄組の解体を裏で操っていた影には、冬夜達とも親交があった若松が絡んでいたのだった。
そして、今回の櫻鉄組を壊滅に追い込んだ最大の要因として、冬夜達の力は一部のパラディスの人物に知られる形となった。
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