第107話


 とうとう、最後の本陣が動き出した。


 第四陣は、そのまま正門へ向かって押し寄せてくる。

 ザット見てもオーガやオークなどの大型モンスターが多い部隊だった。


 俺達が疲れ切ったところに敵は最大戦力を押し付けて来たのだろう。

 雑魚モンスターでも仲間だろうに、そいつ等を使い捨てにする辺りモンスターの考えには全然共感出来ないが、作戦としては優良だ。



 ジーニャの強力な魔法も今すぐには期待できないので、このままだと確実に南防壁は抜かれる。

 更に東防壁と西防壁もどこまで持つかわからない……。


「ハンク、ジェイド、ここからが本当の正念場だ!!お前らには酷なお願いだが、前衛10人で正面の敵(120)を抑えててくれ。上手く接近戦で戦えるようにお膳立てをするから何としても、死守してくれ!!」


『………分かった、俺たちに任せろ。』とハンク☆☆。


『わかりました、今こそ本領を発揮して、冬夜様の命令を遂行します。』とジェイド。


 俺の命令に逆らうことが出来ない彼らへ酷なお願いをする俺は、このモンスターの親玉と傍から見たら同類か………。

 だがそうまでしても、この拠点へ集まってくれた仲間を守るためにどうにかしないとな。


「後衛職と夏達は東城壁へ移動して、まずは、東城壁に張り付くモンスターを殲滅させるぞ!!東防壁へ向かったモンスターの方が戦力的に劣る。その間にここ(南防壁)は、ハンクとジェイド達に何とか死守してもらう。」


「こんな状況でどうやってハンク達前衛職だけであの数(120)を死守するって言うのよ!無理に決まっているじゃない。」と夏。


「そうです。流石にハンクさん達だけでは無謀だと思います!」と益子君。


「俺には考えがあるから、大丈夫だ。そんなことより、早く東防壁のモンスターの殲滅を優先してくれ。1分1秒でも時間が惜しい。」


「っ………わかったわよ。冬夜のその言葉を信じるからね。ほら、スコ(益子)も東防壁へ向かうわよ。急いで。」と夏。


「ナツ、っでも……。」と益子君。


「いいから行くわよ!」と夏。


 結局、益子君は夏に腕を掴まれて強引に連れて行かれた。


 そして、俺は直ぐに仕掛けに入るのだった。



 ―――――――――――――――



 数分後、大型モンスターが南防壁まで接近してきた。

 既に南防壁上に配下の姿が無く、正門は無防備な状態である。


 敵は俺達の反撃が急に無くなったので、諦めて撤退していると勘違いしたのか、進行スピードが緩くなった様だった。


 とうとう敵が正門に到着し、オーガ達が持つ巨大な武器が、何度も何度も正門を打ちつける!


『ドガァァァーーーーーーン』。


 大きな音と共に正門がモンスターの攻撃によって破壊されてしまった!

 更に何度も追撃を受けて、門は跡形もなく崩壊した。



 その正門をくぐって、120ほどのモンスター達が次々と中に入ってきた。



 俺の仕掛けはどうにかギリギリで間に合った。



 そして、「すまないが、少しの間、ここを頼んだぞ。」と呟いて、その場をハンク達10人に任せて、東防壁へ向かって走り出したのだった。



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