第118話



 ちょうど1週間後。


 通信魔道具の画面が明るくなると、キーシャから『敵、動きあり』と短い連絡が入っていた。


 今、彼女達はとあるダンジョンを見張っている。(異世界と地球間だが、リレーの伝言形式で冬夜達へ連絡している。)



 第1波の発生後すぐに偵察を行なって、敵が使った転送陣はすぐに判明した。その後、敵の特定へ向けて異世界の調査を行い、モンスターの発生源がである事を突き止めたのだ。


 ダンジョンとは予想外だった。


 勝手な俺の想像だと、魔王とかそんな存在が異世界にはいて、そいつが世界征服と称してモンスターを派遣しているんじゃ無いかと思っていた。


 ただ、敵がダンジョンから発生しているからといって、やる事は大きく変わるわけでは無く、こっちは準備した作戦を駆使して迎え撃つだけである。






 キーシャからの連絡通り、モンスターの大群による侵略がまた発生したのである。



 今回は更に敵の本気度が上がっていた。


 キーシャからの追加連絡によると前回の倍近いモンスターが俺達の拠点へと続く移転陣に向かって進軍しているらしい。


 普通であれば、拠点を放棄して撤退すべきほどのモンスターの数である。


 まあ、その点も考えてある……。

 今回設置している罠が想定通りの成果を上げなかった場合は、早々に拠点から撤退する予定である。その為に離れた場所に小さな拠点も用意してある。小さな拠点と言っても、平地を確保し簡易的な柵を設置しただけに過ぎない。


 食料及び資材などの物資は新谷が運搬して、建物や防壁は俺が予定である。


 ただ、ここまで発展させた拠点なので、手放すのは得策では無い。川の水を引いてきたり、家畜も随分と育ってきた、田畑も自前で準備している。備蓄庫には、新谷だけじゃ持ちきれない程の食料が保管されている。そう簡単に捨てられない。




 なお、先程、建物や防壁をと言ったのには理由がある。


 直ぐにマイスペースを移して施設を設置すれば良いと思うだろうが、それが出来ないのだ。


 それは、既存のマイスペース領域内に建設コストを使って創り出した建物が残っているからだ。


 マイスペース領域を動かす事は可能だが、建物は移動出来ない。その為、マイスペース領域を移動させると、最終的に端っこに防壁やらマンションが引っ掛かって、それ以上マイスペース領域を移動出来ないのだ。


 遠隔のボタン操作一つで建物を消去出来れば良いが、そんなチート仕様は無い。対象物に接近して消去するしか無いのだ。そのため、後々建物を建てる必要がある。





 そして、とうとう転送陣を使用してモンスター達が千葉へ移動し始めた。


 モンスターが転送された先の足元は、少しぬかるんだ水溜りの様になっている。表現を変えると2cm程度の深さの大きな泥沼が広がっている。そしてその先には俺たちの拠点へと向かう道が出来ている。



 俺達20人程は既に準備をおこなっており、モンスターが現れる所を見える位置で待機している。モンスターは次々と現れて、気付けば300程が移動してきていた。


 100程が1つの部隊となり大雑把に纏まっている。その中で指揮を取っているであろう部隊長に目を付けて位置を確認しておく。


「(アイツは俺、あっちはジーニャ、そっちはカナリィーが担当だ。)」


『わかったのじゃ。』

『了解したっしょ。』


 俺は周りの皆の顔を見渡して合図を送る。


「(そろそろ始まるぞ。)」


 小声で周りへ喋りかける。

 配下達が頭を縦に振って肯定してくる。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る