第46話


 夜中、特に揚石達組織に動きは無かった。


 ただ、夏が夜に揚石達組織のビルの上層部の部屋に明かりがあるので、スコープで観察していた。


 22歳で盛んな歳だ。

 若い女性が連れて行かれた部屋では、まあそう言った事が行われている。


 夏はトイレの回数が多くなっていた。微かにトイレから聞こえる呻き声に俺は耳を塞ぎ眠れぬ夜を過ごすのだった。





 次の朝。

 ちょっと気不味いがそんな事は顔に出さずに夏と顔を合わせる。


「おはよう!昨日はちゃんと眠れたか?」


「っ! うん、もちろんちゃんと眠れたよ。冬夜はどうだったの?」


「まあ、俺はボチボチだよ。周りを警戒してたからちょっと寝不足気味だ……。ところで、揚石達の所に居たときは朝から活動してたのか?」


「そうね、朝から駆り出されてたわ。ノルマもあったし、食料を全く持って帰れなければ……それなりの罰もあったわね。まあ、最初の方は近場で問題なく調達できたから、そこまでキツくも無かったけど。」


「まあ、生き残るために何処も一緒だな。」


「そうね…。 って、ちょっと待って、不味いかも知れない。私達がここに隠れて居ることがバレたかも……。ここに集まって来ている気がする。 あっち側と、こっち側からここを目指して移動して来てる。」


「……駄目だ。俺にはそんな遠くまで見えない。 ただ、夏が言ってるんだから確かだろう。 とにかく直ぐに此処から立ち去るぞ。」


「了解!」


 俺達は直様ビルを飛び出る。

 周りには誰も居る様子はない。慎重に且つ大胆に移動し拠点へ戻る。

 ただ、一直線に拠点へ向けて移動を開始する訳ではない。

 尾行が居ることを前提に別の方角へ向かって遠回りしながら移動する。


 視界には全く人の姿が入らないが、何故か嫌な気配をずっと感じている。

 逆にここまで人に遭遇しないもの何故か可怪しい気もする。

 誘導されている??


「夏、何か変な視線を感じないか?」


「特に変わった感じはしないけど。」


「嫌な胸騒ぎがするんだよ。」




 案の定、何処かのPT5人がモンスターの大群と戦っている場面へ遭遇した。結構苦戦している状況だ。俺達も追われている状況だし、助けていたら追いつかれる可能性があるしどうする……?


 俺が邪な考えをしている中、夏が既にモンスターに向かって矢を放っていた。


「大丈夫?加勢するわ!!」


「ありがとう。かなり劣勢だったので、正直助かる!ただ、2人が参加した所でどうにかなる数じゃない。」


「どうにかならなくても、見過ごすわけには行かないでしょ。とにかく、私達も手伝うから、上手く逃げるわよ!!」


 モンスターの数は20匹以上でウルフとゴブリンの混合部隊だ。ウルフの個体が半分以上と多めだ。

 ある程度力をセーブしつつ、こちらに負傷者がでない様に立ち回るか。


「夏は屋根に上がって、そこからアチラさん達を援護射撃してくれ。俺は前線でアチラさん達の退路を作る。」


「でも、冬夜のスキルってでしょ?前線で戦って大丈夫なの?」


「あの程度の相手なら大丈夫だ! それに俺も死にたくないから危なかったら、直ぐに引く。それじゃ行くぞ!」


「了解!!」



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る