第95話


 ガマズミ町の商業ギルドで受付嬢と世間話をしていた俺は、本題を話し始めた。


「話が脱線してしまって申し訳ない。今日は色々と相談したくて来ました。まず、野菜販売の話をさせて下さい。」


「分かりました。ただ、野菜ですと特別不足している状況てはありませんので、海堂様が期待している様な取引き額にならないかも知れませんが宜しいでしょうか?」


「その辺りは大丈夫ですよ。取り敢えずは、外貨を獲得したいので、その手段の一つとして考えてます。」


「そうですか分かりました。因みにどういった商品になりますか?品物をお持ちでしたら、確認のために別室をご用意致します。」


「品物は用意してあります。」


「でしたら、こちらへお越し下さい。ただ、余り大きな部屋ではありませんので、多くても5名ほどに下さると助かります。」


 そう言うと受付嬢は、奥の部屋へと案内するために移動し始めた。


 俺は新谷、秋実さん、アークと共に受付嬢の後を追った。

 商業ギルドの奥にはいくつか部屋が用意されており、俺達はその内の一部屋に通された。


 その部屋にはテーブルが1つとそれを囲む様に3人掛けと1人掛けソファーが其々2つ用意されていた。


「こちらに掛けて暫くお待ち下さい。只今担当者を呼んで参ります。」


 そう言うと受付嬢は立ち去って行った。

 10分ほどすると扉をノックする音がして、30代くらいの男性従業員が部屋へ入ってきた。


「初めまして、話は受付のレキーナから聴いております。私は商業ギルド員のトマスです。以後お見知り置きを。」


 あの受付嬢はレキーナさんと言うらしい。覚えておかなくては…。


「ご丁寧にありがとうございます。私は海堂、こっちが滋賀、新谷、アークになります。今日はよろしくお願いします。」


「こちらこそよろしくお願いします。こちら異世界の資金を得るために今日は野菜を販売しに来たとの事ですが……差し支えなければ資金を得る理由を伺っても宜しいですか?」


 商業ギルドは商売とは言え信用置けない奴等に資金を渡し、それが元で良からぬ事に発展したらたまったもんじゃないだろう。


「理由は単純ですよ。生活面改善に資金が必要なだけです。個人的には『魔道具』に興味があります!」


「魔道具でしたらこちらでも取扱いがありますので、後でご紹介致しますか?」


「魔道具は是非紹介してください。まだ、魔道具店などを詳しく見て回って無いので、事前に予備情報を入れておきたいです。」


「わかりました。後ほどご用意致します。」


「ありがとうございます。それでは、今回持参した野菜をお見せしますね。 新谷、頼む。」


 俺が新谷へ合図すると、新谷は収納スキルから野菜を取り出し、テーブルの上に置き始めた。


 今回は、タマネギ、ジャガイモ、キャベツの3品だ。そして、ここからは料理上手な秋実さんの出番だ。


「今日用意したのは、タマネギ、ジャガイモ、キャベツの3品です。ご存じですか?」


「知っています。これまでに何度か日本人の方が販売に来ています。一般的な野菜と聞いてます。こっちの世界にも類似品はありますので、基本的にそれらと同じ価格帯での取引きになると思います。」


「確かに私達の故郷では一般な野菜です。ただ、味は全然違いますので、食べて頂ければわかります!」


 そう言って、新谷の収納スキルから今度は作り置きしてあった料理を取り出して、試食会が開催された。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆

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