第114話 ※三人称視点
<三人称視点>
少し時は遡る。
冬夜達がモンスターの奇襲を受け始めた同時刻。
聖域都市パラディスの第二層の一室。
部屋に入って来た若松の部下にとっては、見慣れた光景になっており、淡々と若松への連絡事項を伝えたのだった。
「失礼します!! 若松リーダー、緊急事態です。これまでと比較にならない数のモンスターの大群が押し寄せて来てます。至急、緊急事態対策室(緊対室)へ集合して下さい。」
若松は、日々のストレスから休みの前日になると羽目を外して、売春婦を部屋に呼んで遅くまで楽しむ生活を送っていた。
彼は、第二層の調達班のリーダーになってから、第二層の住民の過剰な食事の要求を満たすために日々奮闘していた。更に第一層の調達班からは、無理な物資の用立てを依頼されて、その無茶な要求すら若松は対応していたのである。
何しろ彼は人当たりが良く、気が効くため皆に重宝がられ、仕事も出来てしまう。出来る奴に仕事が集中して、優秀な奴ほど忙しくなってしまう典型的なパターンである。
第二層に身の安全が保証された住居とそれなりの給料が用意されていなければ、早々に辞めても可怪しくない職場環境だった。
「折角、気持ちよく寝てたのに……、まあ、緊急事態だから仕方ないか。俺もすぐ行くから、お前は先に緊対室へ行っててくれ!」
「わかりました。……って言っても、調達班が言っても意味無いんじゃないですかね。」
砕けた感じでその部下は若松へ話しかけ始めた。若松は、それを咎めること無く返事を返した。
「そう言うな、俺もそう思っているが……、万が一の場合、食料備蓄量などを把握しているのは、調達班なんだ。モンスターの侵略状況を把握しておくのは必要なことだ!」
聖域都市パラディスでは、調達班の傘下に倉庫管理班も含まれており、調達班が食糧事情を全て握っているのだ。
そのため、緊急事態が発生した場合、緊急事態の期間を推測し、食料備蓄量と人数を考慮して、その期間を耐えるための食料配分を検討するのだ。
大規模なモンスターの侵略と聞いていても、第二層に越して来てからというもの、心の何処かで安全地帯に住居があるため、自分は大丈夫だろうと根拠なき自身があった。
そんな2人は緊対室に着いてからやっと、ただならぬ事態が起きていることを知ったのだった。
なお、聖域都市パラディスは、聖域都市と言われているが、全体が聖域と呼ばれるモンスターが侵入出来ない領域に覆われている訳ではない。
聖域は、第一層と第二層と呼ばれている中心部のみだ。それから外側に第三層、第四層と広がっているが、人々が聖域に肖るために集まり始め都市と化したのである。
・第一層 100人(聖域内)
・第二層 900人(聖域内)
・第三層 2000人(聖域外)
・第四層 8000人以上(聖域外)
聖域都市パラディスは、これまでに無い危険な状況に陥っている。
オークエリート2体が各々500の部隊を率いて、合計1000もの大群で押し寄せていたのだ。
ただ、冬夜の所を襲っていたオークエリートの上位種であるオークジェネラルがいなかったのは、不幸中の幸いだ。
そして、その日。
聖域都市パラディスの明け方から始まったモンスターの大侵略は、昼頃まで続き、そこでやっとオークエリート2体が討伐されて終了した。
パラディスの被害は甚大で、2000人以上が死亡、1000人以上が四方へ散り散りとなり行方不明となった。
その被害の殆どは、第四層の住民達であり、男はモンスターの食料となったり、女はその場で蹂躙された。
そして、その余波は別の場所にも広がっていた。
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