第21話
今日は、初めての秋実さんと2人での探索である。
秋実さんは、俺の部屋に拠点を移して以降、アパートの敷地外に出るのは初だ。
これまで、秋実さんはアーク指導の元で弓矢の練習をしてきた。
弓術のスキルを取得している訳では無いので苦戦している様だが、勢い良く矢を放てるようになった。
動かない的に対して10mの距離なら8割、20mの距離なら5割ほどの命中率まで上がっている。
「ある程度の場所は地図アプリで確認しましたが、細かな道案内はよろしくお願いします。」
「分かりました。歩きだと2〜3時間くらいだと思います。」
「了解です。 あと、俺が出す指示には必ず従って下さい。周囲を警戒して迂回する場合もあるかもしれません。戦闘になる可能性もあります。」
「分かりました。私もこれまで弓矢の訓練を積んできました。百発百中では無いですが、何か手伝える事があれば、何でも言って下さい。」
「はい。秋実さんの頑張りはずっと見てきたので頼りにしてます。」
秋実さんがちょっと照れている。それがまた可愛らしい。
暫くは、何事も無く進んで行った。
ただ、初めて周辺の様子を確認した秋実さんの表情が徐々に暗くなっているように思える。
俺はもう見慣れてしまった光景であるが、秋実さんにとっては様変わりしてしまった町並みである。
「このお店も荒らされてしまったんですね。私ここのクロワッサンが大好きだったんです……。たまに差し入れに持っていったの覚えてますか?」
「……あ〜、覚えてます。バターの香りが強くて美味しかったです。」
「そうなんです。ここの店員さん達は元気でしょうか?」
「………きっと元気でやってますよ。」
これは慣れてもらうしか無いが、亡骸なども放置されている。日本では考えられなかった光景だ……。
そんな道を3時間ほど歩くと秋美さんのマンションが見えた。
途中で、ゴブリンにも遭遇したが、難なく撃破出来た。
また、人間にも遭遇したが、軽くあいさつ程度の会話をして別れた。お互いに警戒しながらの会話であった。
ガチャ。
秋美さんの部屋の鍵を開けて中に入る。
部屋の中は綺麗な状態だった。
「ふうぅ〜。荒らされて無くて良かったです。」
このマンション自体がモンスターの襲撃を受けて無かったようで良かった。この部屋以外も無事そうだ。
「何か手伝う事ありますか?」
「でしたら、ここの食料で持っていけそうな物をバックに詰めておいてくれませんか?私は衣類や日用品を詰めちゃいますので。」
「分かりました。適当に詰めておきます。」
食料の方は以外とすぐに詰め終わった。今は秋美さんの準備待ちだ。
「流石秋美さん。ちゃんと部屋も片付けられてますね。」
「そんなにキョロキョロしないで下さい。男性を部屋に入れる何て初めてで、恥ずかしいですから。」
意外だった。
「っえ、そうなんですか!? 意外です。」
「意外ってどうゆう事ですか? 遊んでそうだって言いたいんですか……?」
「変な意味じゃ無くて、秋美さんくらい綺麗なら、男が放って置かないのになぁ〜て。」
「私なんて全然ですよ……。因みに、冬夜さんから見てもそうですか?」
ちょっと恥ずかしいそうにしている。
「もちろん、綺麗で魅力的だなぁ〜って思いますよ。」
かぁ〜と、俺の顔が熱くなる。秋美さんも若干頬を染めている。
「「………………。」」
「何か告白みないになってしまってすみません。」
「いえ、嬉しかったです。今はこのままで良いです。」
っえ、どうゆう事?
「今は」ってことはそうゆう事か?
俺はちょっとテンパってしまった。
「いえ、何でもないで〜〜す。」
秋美さんは満面の笑みを浮かべて満足そうだった。
俺も今はこのままで良いと思った。
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