第12話
アークが駆け足でやって来た。
『冬夜殿、緊急事態です。 多数のモンスターが夜襲を掛けてきた模様です。正確な数は不明ですが、10匹以上のゴブリンです。どんどん集まっており、もっと膨れ上がる可能性があります。現在1階でハンクが応戦中です。』
「分かった、俺達も行くぞ。アークは2階から弓矢で援護してくれ。俺は階段を死守する。秋実さんは、ここで待機していて下さい。」
「嫌です。私も戦います。弓はまだ上手く扱えませんが、ゴルフクラブで叩くくらいは出来ます。」
秋実さんは覚悟を決めた目をしている。秋実さんにはもっと安全な場面で初陣を飾って欲しかったが、ここで説得する時間が勿体無い。
「……分かりました、お願いします。だた、アークの近くで2階からフォローして下さい。決して無茶はしないで下さい。」
「分かりました。」
秋実さんは力強く頭を縦に振った。
「アーク、秋実さんを命に変えても守れ!!」
『その命令、承知いたしました。 必ずや全うします!!』
玄関を出ると、アークが言った様におびただしい数のゴブリンが押し寄せていた。
アークは直様一階のゴブリンへ向かって弓矢を正確に放つ。
俺は今日一日振っていたハンクお手製の木刀を持って、階段に陣取る。
「ハンク大丈夫か!?」
『大丈夫だ!』
ハンクはいつになく大声で且つ普通に返事をした。戦闘中だと普通に会話出来るんだな。
「俺は階段を陣取る。アークと秋実さんは2階から援護射撃する。ハンクは自由に暴れまわってくれ!」
『承知した。』
ハンクはこれまで2階へ登る階段を背に庇いつつ戦っており、本来の力を発揮出来なかったようだ。勢い良く動き出す。
負傷して他の個体より動きが鈍いゴブリンをターゲットにして数を減らす。その意図を汲み取ったのか、アークがハンクの周りのゴブリンを集中的に狙撃し始める。
1匹1匹着実にゴブリンの数を減らす。
そうなるとゴブリン達も馬鹿ではない。アークの存在が厄介なことに気付き階段に今まで以上に群がってくる。
一気に3匹のゴブリンが俺に一斉に攻撃を開始すると流石に対処が出来ない……。
1階まで降りていた俺は、一度、階段の踊り場まで登りそこで下を向くように反転した。
階段は狭く大勢が登って来るのは不可能だ。狭い場所で横に払う攻撃が出来ないので、振り下げ・振り上げ・突くしか攻撃手段が無い。
しかも、こっちは上から攻撃を仕掛けられる。盾で勢い良く押したり、前蹴りなどで敵を落っことせる。殺傷能力は低いかも知れないが、時間稼ぎや負けない戦いは出来る。
ゴブリン達が一列になって階段を登って来る。先頭のゴブリンに向かって、大きく振り上げた木刀を振り下げると見せ掛けて、顔面目掛けて突きを放つ。
上手くフェイントが決まって、ガードで腕が上がっている間を俺の木刀が擦り抜けてゴブリンの目に突き刺さる。
『ギギィーーーーーーーーー。』
そこへ、木刀を振り下げゴブリンの頭を叩く。
ドゴォ。頭蓋骨が砕けた様な音と手応えがありゴブリンは倒れた。
他のゴブリン達は倒れたゴブリンの上を躊躇なく踏みながら階段を登って来る。
今度は、前蹴りをしてゴブリンを押し飛ばすと後方のゴブリン共々転げ落ちる。
それから数十分後ほとんどゴブリンの姿が見えない。
最後のゴブリンをハンクが薙ぎ倒す。
「はぁはぁ、やっと終わったか。」
「冬夜さん大丈夫ですか?」
2階からこっちへ向かって秋実さんが近寄って来る。俺は階段に腰を降ろして座っている。
「打身やかすり傷程度なので大丈夫です。秋実さんは大丈夫ですか?」
「私もアークさんも大丈夫です。」
「それは良かった。ハンクも大きな怪我は無さそうです。」
俺達2人が階段の踊り場から1階へ降りようとしていた時のこと。
『ゴオォォーーーーーア!』
大声と共にアパートの1階の部屋のドアが内側から外側へ向かって吹き飛んだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます