第50話
ハンクがやられたとの信じられない声が聞こえてくる。
ハンクより接近戦で強いのはこの拠点に俺しか居ない。俺は直ぐに前線へ向かおうとするが、それをデビットに止められてしまった。
『ハンクがやられてしまったとしても、直ぐに前線へ行くのは危険です。まだ、戦場には仲間が居ます。それに屋上から魔道士達も居ますので、状況が把握出来るまでどうかここで待機下さい。』
「だったら、私が確認するよ。」
そう言って、夏は拠点を囲っている塀の上へと登り辺りを見回す。
「厄介なやつがいるわ。あの対人無敗の揚石がいる!! 冬夜ここは、一旦撤退する事も考えないとどんどんと被害が出る可能性があるよ。」
「………とりあえず夏は此処にいろ。俺が揚石を何とかして見るが……、万が一どうにもならなそうならお前は皆と一緒に逃げろ。」
「いや、でも………。」
「万が一の場合は、秋実さん達を頼んだぞ。」
俺は、フラフラと散歩でもしてるが如く歩いてくる揚石の元へと向かった。
「あんたが、揚石か?うちのハンクをよくも殺ってくれたな。」
「はぁ〜誰だお前は?さっきのデカブツはまあまあだったな。次はお前か?」
「ああ、今度は俺が相手をしてやるよ。」
『冬夜殿、ちょっと待って。こいつはさっきハンクを剣術で翻弄していたほどの相手だ。流石に冬夜殿でも勝てるか難しいぞ……。まずは、俺が相手をして時間を稼ぐから何か切欠を掴んでくれ。』
ガラムが俺と揚石の間に入り戦闘体勢へ入った。
「なあ、そろそろ俺と戦う相手は決まったか?俺は誰でも良いんだがよ!!何なら2人で掛かって来ても良いんだぜ。」
『俺が相手をしてやるよ!小僧、掛かってこい。』
「はぁ〜〜誰が小僧だよ。おっさんが!」
ガラムは最初から全力で揚石との距離を詰める。牽制の左ジャブを数発放つがガラムの拳は空を切る。揚石はガラムの攻撃を最小限の動きで躱す。
胴体へのガラムの右ストレートも読まれているかの如く紙一重で躱す。流れるように出た右ハイキックは揚石の左腕でガードされてしまう。
ガラムが右足を戻して次の攻撃へ移ろうとしている最中に、今度は揚石の目にも止まらぬ左ジャブがガラムの顔面を2発捉える。ガラムの頭が衝撃で後ろに吹き飛ぶがそれを堪える。しかし、ガラムは揚石の右ストレートを両手でガードするが、1mほど後ろへ押し返されてしまった。
ガラムは致命傷を何とか受けないように戦っているが、揚石との実力の差は一目瞭然である。
ガラムの攻撃は、揚石に届かない。逆に揚石の攻撃は、的確にガラムへ当たり10分もしないうちにガラムはボロボロになってしまった。
確かに揚石は強い。格闘技だけの勝負で俺がコイツと戦ったら勝てないだろう……良くて引き分けだ。ただし、これだけの格闘技術を持つ揚石が、剣士であるハンクと戦ったら勝てるのだろうか?少し疑問が残る。
気になるのがさっき程のガラムとの会話だ……揚石はハンクの事を『剣術で翻弄していた』。
ガラムとの戦いでも剣術を使えば10分も時間を掛けずに簡単に倒せていたのでは無いだろうか……では、なぜ剣術を使わないのか? 使わないのじゃなくて使えないであれば、この戦いがヒントになる。
そもそも、スキルの力だとすれば、こいつのスキルは何だ? 剣術スキルなのか?だったら、ガラムの拳術スキルに同等以上の力を出すのは難しいだろう……。だったら何のスキルなんだ?色々なスキルをここまで使いこなせるなんて………。
そこで、俺は一つの仮説を立てることにした。
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