第84話
俺達が仲介業者の建物を出て、新谷達の住んでいる小屋へ向かっている最中のこと。
車がすれ違えるかどうかくらいの幅の道の前方と後方に、頭を布で覆い武器を持った8人組の集団が俺達4人を囲んだ。つけられている様子は無かったので、スキルや魔道具などが原因なのだろう。他の運搬業者の報酬で用意した小袋が4つ残っているはずなのに仲介業者はわざわざ机から小袋を取り出したのが怪しい。あの小袋に何かあるんだろうが……。
「俺達に用があるのか?人違いってことはないのか?」
「間違い無くお前らだ。正確にはそこの男2人に用があるのだが、お前やそこの女にも一緒に消えてもらう。」
「お頭そこの女は美少女でっせ。どうせなら最後に美味しく頂いてもいいでっか?」
「お頭!そうさせて下さい。」
「……仕方ない。お前たちの好きにしろ。ただし最後はちゃんと始末しろよ。」
「「「「やったぜ〜。」」」」
悪党の集団は俺達を消すと宣言して、更にジーニャに対して下世話な話を進めている。ってことで敵確定である。
「ジーニャ、後ろを頼んでもいいか?俺はあの頭だけ生け捕りにする。」
『もちろんじゃ。さっさとやっつけて早く拠点へ戻って風呂へ入りたいのじゃ。』
「新谷と加賀は自分達の身を守れ。俺達2人が敵の数を減らす。」
小声で話をして俺とジーニャはすぐに行動を起こした。
ジーニャが両手を敵4人へ向け『アイスランス』と力強い言葉を放つと、全長50cm・太さ最大10cmほどの鋭利な氷の槍の様な物が7本ジーニャの目の前に現れる。そして、それらが勢い良く後ろの敵4人へ向かって飛んでいく。
アイスランスは敵4人全員に命中しており、頭と心臓に命中した2人は絶命しており、足・腹・胸などに命中した2人は藻掻き苦しみながら地面を転げ回っている。
俺の目の前には、悪党4人が横になって並んでいる。
「て、てめぇーらよくもやってくれたな。」
1人の悪党が叫んでいるがそれを無視して俺は1番弱そうな左手前の男へ接近する。俺が接近するとその男は『っひぃ』とビクつき少し固まってしまった。俺は悪党の武器を持つ手を切り捨て、鳩尾へ蹴りを入れて後方へ吹き飛ばす。
その間に1人の悪党が俺の心臓辺りへ目掛けて槍を突き刺してきたが、俺は先程の悪党への蹴りの反動で横へ少し飛び槍を躱すと同時に槍の柄を剣で切り落とす。
槍を半分に切り落とされた悪党は、元槍を棍棒のようにして俺の頭を殴ろうと振りかぶるがその間に俺に心臓を一突きされて倒れた。
その頃、ジーニャが2回目の『アイスランス』を唱える声が聞こえると、それと同時に後ろから悪党2人が騒ぐ声も止んだ。
ほんの1〜2分の出来事で6人もの部下がいなくなった悪党のリーダーは、困惑して呆然と立っているだけになった。
悪党の1人はパニックになり武器を捨ててその場から逃げ出そうとするが、先回りしていた俺のローキックをくらって、変な位置でくの字に折れた自分の足を見て騒ぎなから地面に転がっている。
「取り敢えず、話を聞ける奴が1人残っていればいいか……。」
それを聞いた悪党のリーダーは武器を捨てて両手を上げながら膝をついて命乞いをしてきた。
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