第83話
新谷と加賀が『リンク』と『ラクター』だと分かってからは、互いに気兼ね無く話せる事が出来た。
そして、彼等のパラディスでの生活状況を把握しているので、俺は彼等をウチの拠点で生活しないかと誘うと二つ返事で承諾を得ることができた。
既に異世界から地球へ戻ってきて、今は聖域都市パラディスに到着した。移動だけで6時間ほどを要してしまうので、既に夕方近くである。
「じゃあこれから、仲介業者への最後の報告を行って、その後に海堂達の拠点へ移動するっす。」
出発時に集合場所を訪れた俺とジーニャは、新谷達と一緒に仲介業者への報告に向かった。ハンク達6人はパラディスの第四層で待機してもらっている。
「こんにちはっす。無事に野菜の納品が完了したっす。これが相手方から預かった荷物と受領証明書っす。」
新谷が収納スキルから預かった小袋と受領証を仲介業者へ渡した。
「確かに受領証明書と証明書に記載された通りの金額を確認した。今回もご苦労だったな。これは今回の報酬だ。ところで、他の奴らはどうなったか分かるか?お前ら達より先に出発した事は確認しているが、彼等が帰ってきた事は確認が取れていないんだよ……。」
仲介業者は、受け取った金額に満足している様で用意してあった5つの小袋の内1つを新谷へ渡しならが、質問をして来た。
「俺は今回新谷達の護衛をさせてもらった海堂だが、俺から話させてもらう。憶測になるが、彼等は次の2つの理由で全滅の可能性が高いだろう。
1つ目は、俺達が異世界の森の中を進んでいる際に、モンスターに襲われて食われている6人ほどの亡骸を確認している。全体の人数が不明だが、そこから散り散りになっておそらく………全滅しているだろう。
2つ目は、俺達がガマズミ町へ着いてから次の日の朝まで地球人の訪問者が居なかったと、ガマズミ町の門番から確認している。俺達がガマズミ町を出発した後に、無事に運搬業者達が町へ到着していれば良いのだが………移動時間等を考慮すると考えずらいな……。
以上の理由で全滅している可能性が高いと俺は思っている。」
仲介業者は、さっきの満足げな表情から一転して一瞬だけ顔を顰めたがすぐに直して話を続けた。
「そうか………。じゃあ、また今度も運搬を頼めるか!? 今度は今まで以上の物量の運搬を依頼しようと思っているから報酬も弾むぞ!!お前らが目指している第三層へも住めるほどの金額となるだろう。」
「その事なのですが、今回の依頼をもって運搬業は廃業にしたっす。5組中1組しか無事に運搬出来てないとなると……成功率20%っす。僕達はこれまでたまたま成功して来れたっすけど、これからもその奇跡が続くとは限らないっす。今後は地道にこっちの世界で仕事をして行こうと思ってるっす。」
「こっちの運搬業の稼ぎなんてたかが知れているだろう。そんなだと、いつになってもパラディスの第三層なんて住めないぞ!だったら、多少リスクを冒しても異世界への運搬で稼いだ方が良いんじゃないか?」
「その事なんすけど、もうパラディスの第三層を目指すのはヤメたっす。既に新たに厄介になる先も見つけてあるので大丈夫っす。そこで新たに仕事を探して生活するっす。」
「本当にお世話になりました。自分と新谷がこれまでやって来れたのも貴方のお陰です。ありがとうございました。」
仲介業者の誘いに対して新谷と加賀の2人はキッパリと拒否を示したのだった。この態度に仲介業者は、目をすっと細めた様に見えたが言葉を返してきた。
「そうか、お前らがそう決めたんだったら仕方ないな……。もう二度と会わないかも知れないし、これは餞別だから持ってけ!!」
仲介業者は、机の中から小袋取り出してそこへ魔石を入れて投げて来た。
「ありがとうございますっす。それでは、お元気で。」
新谷がその小袋を受け取ると御礼をして、仲介業者の建物を出てくのだった。
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