第112話
「ッキャ。」
秋実が矢を受けて倒れて地面に頭を打った。
「秋実ーーー!」
秋実に駆け寄り話しかけるが返事が無い……。俺は少し放心状態になってその場に膝を突いていた。
俺のせいだ、俺がもっと強ければ、もっと侵略に対して対策していれば、もっと拠点の強化を行なっていれば、もっと仲間を集めていれば、最初から拠点を放棄していれば………こんな事にはならなかったのに…。
悔やんでも悔やみきれない……。
隣で夏が何か騒いでいるが声が耳に入って来ない。
「………や、……と…やってば!冬夜ってば!」
バチンと頬に痛みが走った。
「冬夜しっかりして、秋実さんは無事よ!弓矢が肩に刺さっているけど、ポーションを使えば命に別状は無いわ!倒れた拍子に頭を打って、気を失っているだけ見たい。」
それを聞いた俺は、直ぐに秋実が息をしている事を確認し、気を引き締め直した。
「それより、あっちが大変な事になってるわ!」
夏が指差す方を見ると、オーガを上回る体格のバケモノがペックス達と戦っていた。そのバケモノはオークの上位種である………配下が言うにはオークジェネラルだった。
オークジェネラルは巨体と思えない程に俊敏な動きをして、ペックスの双剣を躱したり、大剣で防いだりしている。そこへアークが足を狙って矢を放つが、これまた躱す。
俺も参戦して、オークジェネラルへ斬り込んでいく、先程まで余裕の表情をしていたオークジェネラルは、少し真面目に対応し始める。
俺の剣の乱撃をオークジェネラルは大剣で全て受け止める。反撃とばかりにオークジェネラルが放つ大剣の攻撃を俺はギリギリで何とか受け流したり、躱したりする。
俺とオークジェネラルの間隔が無いため、魔法やバリスタでの攻撃が出来ない。ただ、ネヒルルはバリスタに手を掛けたままズッとそのチャンスを伺っていた。
今の俺は、配下の能力継承スキルでハンク☆☆の暗黒剣術レベル3を継承している。
更にゼクトの支援レベル2を受けて能力が15%増加している状態だ。
数時間戦い続けているため、疲労がピークに達しているが、それでも相当な補助を受けている……。
それでも、互角の戦いまで至らずに俺が押されている。
流石、上位種だ。
このままではマズイと感じたアークが配下の皆に指示を出し始めた。
その時俺はオークジェネラルの攻撃を防ぐのが手一杯でアーク達の動きが全然見えていなかった。
気付いたのは、オークジェネラルが少し周りを気にし始めたからだ。
キャメルとキャベックの魔法使いの後衛職がオークジェネラルへ向かって、2方向から突っ込んで行く。
自分達が出せる中で一番攻撃力の高い魔法を暗唱しながらだ。
「お前達は下がってろ!」
2人は俺の言う事を聞かずにそのままオークジェネラルへ突進を続ける。そして、オークジェネラルはキャベックが自分の攻撃範囲に入ると、キャベックを一刀両断した。その隙にキャメルが少し近付いて、最大出力のロックランスを放った!
ドガァーン
オークジェネラルの脇腹へロックランスが激突して、それなりのダメージを与える。しかし、その攻撃に耐えたオークジェネラルは、大剣をキャメルへ向けて横へ振り抜いた。キャメルの胴体が上下に分かれて、光と共に消えた。
次はシードのウィンドカッターがオークジェネラルの腕に当たり大きな傷を付けるが、シードはオークジェネラルに一撃で倒される。
アークが出した作戦は、死を覚悟した特攻による自爆攻撃だった。
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