第32話
俺たちが疲弊するのを待ったのか、ようやくオーガが重い腰を上げた。
のそりのそりと一歩づつハンク☆☆へ近づいてくる。
オーガは武器を装備しておらず素手の状態だ。
こちらの前衛はハンク☆☆とジェイドだけだ。中衛は2人、後衛が3人だ。
そんな中、ジーニャが不甲斐無さそうに口を開く。
『主、この場は一旦秋実を連れて撤退するのじゃ。正直、この戦力ではオーガを止める事は困難じゃ………。』
アークもジーニャの言葉に賛同する。
『冬夜殿、不甲斐ない我々で申し訳ないですが、ここは一旦引いて下さい。戦略的な撤退です。』
「……そこまでの相手なのか?まだハンク☆☆が残っているし、大魔道士ジーニャも生きている。時期尚早じゃないか?」
『いえ、そんな事はありません。どう考えても、あのオーガは私共の手に追える相手ではありません……。ハンク以上の実力を持っていると推測されます。』
『そうじゃ。妾の魔法が当たればどうにか致命傷を与えられるだろうが、今の妾の
俺が可怪しいのか……あのオーガは凄く強いと思う。ただ、本当にそこまで強いのだろうか? 何故か変な違和感に包まれている。ただ、俺より強い配下達がそう言っているので、そうなのだろうが……。
「わかっ」
俺が最後まで返事する前に事態が急変した。
ドガッ、ボゴッ。
巨体のオーガだったが、理解できない言葉を発したかと思うと、地を勢い良く蹴り物凄いスピードでハンク☆☆とジェイドの2人を吹き飛ばした。それこそ、襲われた方は、10tトラックに正面衝突したほどの衝撃で吹き飛ばされた。
『スキルまで持ち合わせておったか……』
ジーニャが険しい表情を浮かべながら小声でボヤいた…。
『冬夜殿、我らが時間を稼ぎます。どうか無事で逃げ切って下さい。』
アークは直さまオーガへ向かって走り出した。
オーガの動きがスローモーションの様に見える。オーガの右ストレートがアークを囚えて吹き飛び、返しの左ストレートがキーシャを囚えて彼女を吹き飛ばす…。
シード、キャメル、ジーニャの3人の魔法はそれぞれオーガへ向かって飛んでいく。オーガは両手をクロスさせて防御体制を取るとその魔法を正面から受け止める。
ドガーーーーーン。
凄まじい炸裂音と共に砂煙が巻き起こる。
……そこには、ダメージを受けているが五体満足なオーガの姿があった。
『主……なぜ逃げておらぬのじゃ……。』
ジーニャが膝を付いて力なく座り込んでしまった。
次の瞬間、オーガはニヤリと気味の悪い笑みを浮かべこっちへ向かって突進してきた。俺は直さま構えるが、どうも俺を狙っているようではない。
オーガは俺の近くにいる秋実さん目掛けて猛スピードで突進して来たのだった。
「冬夜さんだけでも、逃げて下さい。」
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