92 妹の関心度が上がったことが分かった件

「出会いは大切ですのよ。何よりも若い娘にとって!」


 そこでちら、とアンジーの方を見た。


「ねえアンジー、最近はどう? 帝都は楽しい?」

「ええお母様! さすがに学年が上になってくると、色々と難しいこともできてしまって…… でも時々クライドさんが休みに連れ出してくれるから元気が出るわ!」

「そうそれは良かった! クライドさん、ちょうど同じ頃に卒業ということですから、帝都でのこの子をお願いしますわ」


 私はちら、と目だけで父の方を見た。

 何やら微妙に顔がこわばっていた。

 母は明らかにクライドさんを推していた。



 正餐の後、私は自室に戻ろうとするアンジーを呼び止めた。


「何ですのお姉様」

「クライドさんとお帰りになったのは偶然ではないのね」

「ええ勿論。そんな偶然はそうそうないでしょ」

「帝都ではたびたび会っているの?」


 そう問いかけると、アンジーの表情が急に酷く嬉しそうなものになった。


「まあお姉様! もしかして嫉妬してなさるの!?」

「嫉妬とかでなく、貴女方一対一で会っているのか、ということを聞いているの。若い男女が外を一対一で歩いているという時の視線がどういうものか分かるでしょう?」

「そりゃあ勿論! あの方はお買い物に付き合ってくださるし、今流行りのソーダファウンテンのあるお茶の店へも連れていって下さるのよ」

「学校から何か言われていない? そもそも外出する時に一人では危険だと第四では言われているでしょう。それに制服でソーダファウンテンのある様な店への出入りなんて」

「嫌だお姉様、制服で行く訳ないじゃないの!」

「第四でも校則はそうなっているはずだわ」

「そんなもの! 行きつけのドレスメーカーに専用の着替え室があるの! 私はそこに街歩き用の服を置いているの! 皆そうしているわ」

「貴女まだあの一割の中に居るの?」

「一割だの二割だの! ああうんざりだわ。学校も寮も、何だって帝都という楽しい都会で、あんな規則でぎりぎり私達を締め付ける訳?」

「規則は縛るだけじゃないわ、守るものでもあるわよ」

「そういう言い方、大っ嫌い」


 ほう。

 私は目を丸くした。

 アンジーの私への評価は「利用すれば何とかなる見下す相手」から、どうやら「大嫌いな相手」へと昇格したらしい。

 関心度から言えば、確実に後者の方が上だ。


「向こうでのお姉様はいつも私のことを陥れようとしていたじゃない! そのことはクライドさんにもちゃんと話したわよ! 私は合同祭でお姉様のせいでさらし者にされたんだって!」

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