51 親友の婚約者を紹介してもらう

「えー、こっちが私の婚約者のライデンです。元々私の護衛騎士なの」

「ごえいきし」

「え、居たの?」

「あ、はい。一応」


 ライデンという人はあっさりそう言った。


「ほら、この間来た時思ったでしょ? うちは辺境伯って位自体は高いんだけど、子供はどっちかというとのびのび、というか生き残りの技術を会得することが大事というか」


 それでリューミンのきょうだいは皆あれこれと作業に取り組んでいた訳か。


「あとね、辺境伯の子女にはちょっとした捜査権みたいのがあってね」

「良いのですか? 嬢さん」


 ライデンが問いかけた。


「最近はそういうことがあまり無いだけよ。だから貴族は大概知っているはずなんだけど。属国や大型の領地に不穏な動きがある時に王家とかの婚約者として送り込まれて内部捜査する権限があるの。先代の陛下の御代には結構あった様なんだけど、さすがに今は殆どそんな事態は無いらしいので安心しているの」


 セレは口をぽかんと開けて、滅多になく驚いた表情になっていた。


「だから今は滅多に無いんだって。ただだから、私もだけど、一応いつそんな事態が起きて陛下からの召集が来た時に行ける体勢は作っておかなくちゃならない訳。だから実際の婚約者、というか結婚相手は身近から選ぶことが多いの。……というか、大概結局護衛騎士とくっつく場合が多いのよね」

「え、どうして?」

「幼馴染みですもん」

「でもこの間来た時には見なかったけど」

「男がそもそも夏はあまりこっちに居ないのよ。そう思わなかった?」


 考えてみれば。

 女と子供、そして年寄りばかりだった印象がある。


「元々女の方がこっちは多いの。それでいて、夏は東寄りの森や、海へ大型の魚を捕りにとか、そっちの仕事に精を出してもらっているのよ」


 ね、とリューミンは彼の方を見て頷く。


「自分は大概の夏は海に出て大型の魚を確保する組に入っております。嬢さんが学校に行く様になったら護衛騎士の役割は殆ど無いので」

「え、でも魚を捕っても、保存は大丈夫なの?」


 セレは問いかけた。


「海伝いに氷室のある地域に向かうんですよ。いくらかは領都近辺に持ち帰り、保存用食料を作ったり、輸出用の缶詰とかの生産にも回すのですが、やはり基本は冬用の備蓄ですね」


 納得した様にセレは頷いた。


「それでこの筋肉だと」


 そう。

 ライデンという護衛騎士はまたこれが大きかった。

 リューミンは私達の中で決して小さくはないのだが、彼と一緒に居ると子供と大人くらいに見えてしまう。


「あ、でもこっちの男って大概大きくなるのよ。お父様だってそうだったでしょう?」


 一年の夏に親しく語りかけてくれた伯のことを思い出す。

 確かに大きなひとだな、と色んな意味で思った。


「帝都に行った時思ったのが、男の人が小さいなー、だったのよね。テンダーの友達のヒドゥンさんみたいなひとが居るとは思わなかったわよ」

「あのひとは別格だろ」

「まあ、確かにね……」

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