44 第四の総代からの手紙と向こうの事情

「拝啓


 先日、我が校の新入生がそちらの寮において問題を起こしました件、こちらの自治組織でも問題となりまして、早速集会を開き、生活・礼儀作法担当の三人の先生、及び寮監の先生三名により改めて全校生徒に対し寮則の説明会を開きました。

 しかし正直なところ、この生徒手帳に書かれている文面は少し古風であり、我が校の生徒には難しく感じられます。

 先生達はこの点について深く感じ入り、易しく読み進めることができる寮則の第四女学校版を作ろうとご努力なさっております。

 押しかけについては、そちらの寮へ行った新入生だけでなく、多方面において見受けられるでもありますので、我々自治会と致しましても、できるだけ厳しく接していきたいと思います。


                      総代リスティン・サギージャ

                                   敬具」


「添削したくならない?」


 ヘリテージュは苦笑した。


「……なる。本当に総代なの?」


 私は目を疑った。

 誤字とくどくどしい文体もそうだが、何より内容が。


「そう言えば、妹が受かった時点で察するべきだった…… 妹はうちの乳姉妹程度の教本しかやっていないんだわ……」

「実際押しかけ騒ぎはあちこちで起きているんですって。もう数え切れないくらい。でもね、総代のサギーシャ嬢自体はあそこには珍しく謙虚なひとなのよ」

「謙虚……」

「私も一度こちらに来てもらって会ったことがあるが、確かにとても第四の生徒とは思えなかったな」

「セレが行くと大騒ぎになることが目に見えているから、こっちに来てもらったのよ。向こうの幹部もその辺りは心得ていてね。学業の成績はともかく、そういうひとも居ることは居るのよね。元々学業の遅れというのは、地域によるものもあるし」

「地域?」

「やっぱり草原とか、あまり学校に重きを置かないとこの出身だと、がんばっても第四の優等生か第三の真ん中、ということが結構あるの。これは帝国全体としてはちょっと問題なのだけど。でも向こうの暮らしを考えると、無理強いもできないってことね」

「それは分かるな」


 リューミンも大きく頷いた。


「うちの辺りの子供達も、あっちでは分家貴族だったとしても、ここでする様な勉強はそうそうしないわね。それよりまず覚えなくちゃならないことが多いし」

「羊とか?」

「木彫りもよ」


 くくっ、と私達は笑った。


「しかし、こうなってくると本気で第四との合同祭は頭が痛いなあ…… 夏期休暇を越えるのが悪夢のようだ……」


 セレは髪をかき回した。

 ――と。


「そう言えばセレ、何かいつもと髪型が違わない?」


 そう言うとヘリテージュが大きく笑い出した。


「ちょっと、今頃気付くの? さっきから居たのに」


 そう、セレの髪の毛は後ろの一部分以外、ばっさりと耳の下辺りで切られていたのだ。

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