45 四年の討論会のテーマは髪型にしよう

「ほら見てよ! 尻尾残して後ばっさり!」


 だからヘリテージュ、その三つ編みの尻尾を持ち上げて揺らすのは……

 セレの髪は元々背中の半分くらいまであった。

 ところが、後だけ残して、横までの髪をばっさり切ってしまったのだ。


「肩凝りが結構あってなー…… このひとが色々と資料突きつけてくるし。でまあちょうどいい機会だと」

「いい機会?」

「あ、そうそう。そもそも私達自治組織の件で来たんだったわ」

「第四の総代の話じゃないの?」

「それはついで。で、この髪と関係があるんだけど」

 再びヘリテージュは尻尾を揺らす。

「髪と?」

「そう、髪と。これは四年生の恒例らしいのだけど、一つ要望を探して議題を決めて話し合い、学校に提出するのが最初の仕事なんですって。四年生にそんなことあったなんて知らなかったわ。確かに毎年微妙に寮の内則が変わっていたりしたけど」


 内則は全校統一の寮則の下にある、第一だけのローカルルールだ。


「で、今回は髪型について話し合ってもいいんじゃないかって」

「髪型?」

「私実は校則と寮則を精査してみたんだけど、髪型についての規則…… というか、違反罰則つきのものは無いのよ。ほら、貴女の妹とその友達、もの凄くふわふわしてなかった?」

「してた……」


 制服にリボン、という違反を平気でする子達だ。

 髪を結い上げてまではいなかったが、明らかに作った巻き毛だの、大きなリボンだの、本当に自分で作ったのかと思われる程の細かい編み込み等々。

 ちなみにアンジーは綿菓子の様な髪の毛にやはり薔薇色のリボンを結ぶ――だけでなく、絡めてもいた。

 髪に関しては普段気にしていなかったので、つい制服ばかりに目がいったが、考えてみればとんでもないことだ。


「で、さて、このセレの髪型はどうでしょう?」

「似合う」


 私は即答した。


「元々男装した時も、帽子の中に入れたり、後でくくって前髪だけ強調した時似合っていたもの」

「じゃあ私がそうしたらどう思う?」


 む、と私は困り、リューミンの方を向いた。


「別に短く切ること自体禁止されていないのよね。でも皆当然の様に長く伸ばしているでしょ?」

「いやだって、いつか皆結い上げるでしょ?」


 社交界にデビューしたら、皆長居髪を結い上げて、そこに何かしらの装飾を施すものだ。


「でもいつまでもそれでいいのかしら?」


 はて? 

 なかなかヘリテージュの言いたいことが分からない。


「あと、洗髪が楽になるでしょう? 乾かすのも。短いなら短いなりの何かお洒落もあると思うのに、何故かそこはずっと変わらないのよね」

「でも変える必要ある?」

「必要は無いけど、切っても構わない、という方が面白いと思うのよ」


 だからその件について、自分達の学年で話し合ってみたい、というのだった。

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