56 問題のある二割

「それはたぶん、第一がとても善い性質の方が集まるべくして集まった結果だと思います」


 どうしようもない、という顔をしたリスティン総代の代わりに、ザビニアル副総代が語り出した。


「第四は何故かその二割が学年内で妙な力を持ってしまっているのです。何がどう、という訳ではないんですが、気付くと彼女達は地方出身の子や、試験を受ければ第三に上がれそうな子をめざとく見つけては虐めるのです」

「は? 何でそんな無駄なことを」

「そう、それが無駄だ、と思うのが、そちらの善さなのです。残念ながらうちは公平とはほど遠い学校生活を送らざるを得ないのです」

「何でまた」

「この二割というのは『不公平であること、そして自分がその一番上であること』に全ての価値を置いているんです。家柄とか金持ちであるかとか、学則をすり抜けたお洒落とか、実家のこととか。そして帝都近郊貴族であることを鼻に掛けるということもあります。あと、容姿ですか。八割にとってはどうでもいいことですが、その二割の態度によって、実家がどうなるかと脅された中には、気が弱く、退学した者も……」

「実際に脅された者は?」

「過去にはあるんです。残念ながら」

「そいつは家も腐ってるな」

「家というより、親?」

「でも、家とか親というならば、テンダー様は第一でしょう? 何故アンジーさんの様な…… 何というか…… な妹さんなんですか? ……っと、ごめんなさい、でも、ちょっと信じられなくて」


 ザビニアル副総代は私の方を向いた。


「まあ、あの子はきっと昔からそうだったんだと思うけど」

「何か、ずいぶん人ごとなんですね」

「いや、本当に私にとっては人ごとで。春の事件が初めてですよ。あんなにあの子と会話したのは。と言っても全然会話にならなかった訳ですが。どうやってあんなのが育ったのか私が知りたいくらいです」


 友人達は全くだ、という様に頷く。

 私の家庭の事情を知っているだけに。


「第四の先生方はどう思っていらっしゃるんですか?」


 ヘリテージュは尋ねた。


「先生方も努力はなさるんですが、何せ……」


 ふむ、とヘリテージュは少し考え込んだ。

 おそらく何かしら思うところがあるのだろう。


「リスティン総代、そちらのその二割の生徒をリストアップしていただけますか?」

「え?」

「隔離はできないなら、いっそ中心に据えてみるというのもいいかもしれません。ともかく目立ちたいのでしょうね、その子達は。だったら思いっきり目立たせてやりましょう」

「正気ですか!?」

「正気も正気です。おそらくは立場の強い、家格が高い貴族の令嬢が中心に居るのでしょうね。ですが…… まあ、ちょっと考えがあるので」


 そう言ってヘリテージュは実にいい笑顔になった。

 うわ怖い、と私達の心がその時一つになった。 

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