57 第四との合同祭①
ヘリテージュは次の話し合いの際、「問題の二割」の生徒のリストをもらうと、早速動き出した。
そしてその結果。
*
合同祭当日。
幾度かの話し合いやら打ち合わせやら練習を積み重ねた結果、行われたのは、一つの舞台だった。
配布された配役や話の流れを記したパンフレットを見た生徒達――特に第四の八割の生徒はぎょっとした。
薄々打診が来ていたのは皆知っていた。
「……だってもう、あのひと達浮かれていたし」
「おかげで私達割と何も起こらなくて平和だったけど」
「で、でも…… できるの?」
第四「問題の二割」の中でも、特に一、二年生を総代は指名した。
無論その中にうちの妹も居た。
そして第一からは。
「……え、待って」
幕が開く。
タイトル「男子校生が女を嫌う時」。
説明文にはこうあった。
「このたびこの演目を実行するにおいて、かつて合同祭を共に成功させた第五男子校生の協力のもと、第一と第二男子校の生徒にアンケートをさせてもらった。
これはその結果報告、嫌いな女、第十位までを寸劇形式発表するものとする」
男子校生の格好をした第四の生徒達に与えられた役割は、様々な接近の仕方をしてくる女生徒に対し、こう言うこと。
「僕はそんな女は嫌いだなあ」
ただし、どういう女の姿が出てくるのかは彼女達には知らされていない。
彼女達にとってもそれはサプライズということだ。
実際、劇をしようと思っても台詞が覚えられない、もしくは覚えようとしない子達だ。
だったら、反応だけを単純に指示し、全部で十人少し、一人ずつ前に出し例の台詞を言わせ、あとは後で「そうだ、そうだ」と言わせるだけである。
「第十位」
よく通る声が響き、ぱっと照明が当たった場所には男女の扮装をした、体つきからして、おそらくは四年か五年。
ナレーションが入る。
「今日はとてもいい天気。そこでとある殿方は、婚約者の女性と長閑に散歩しておりました。すると」
たたたたた、と走り寄ってくる装飾過多の髪の女。
「公爵令息様~ずっと前からお慕いしておりました~」
「な、何だね君は」
「わたし~、ずっと以前から公爵令息様にとって、わたしの方が似合っていると思っていたんです~ほらどうですか?」
そう言ってするりと婚約者との間に腕を滑り込ませて抱きつく。
ひっ、と婚約者の女性は公爵令息に相応しい上位貴族の仕草で不服の意を示す。
慌てて公爵令息はしがみついてくる女を引き剥がす。
「また~嫌がっちゃって~」
「やめてくれやめてくれ、待ってくれこんな女知らない!」
そこで第四の生徒に照明が当たる。
予定されていた順番の一人がつと進み出て。
「こんな女は嫌だなあ」
「そうだ、そうだ!」
暗転。
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