8 寮に入ったら、否応無しに友達ができた

 帝都の寄宿制女学校と言っても色々ある。

 私が通うことになったのは官立第一女学校という。

 帝都にはこの様な女学校が第六まで存在し、数字順にそれ相応のレベルとなっている。

 基本は願書を提出、貴族で家庭教師がついている場合には習熟度を示したレポートの提出。

 庶民の基礎学力のための学校にのみ通った者の場合、学力診断のための入学試験がある。

 そして第一から第六まで、適性のある学校に振り分けられる。

 これは帝国教育省によるものなので、指定されたら他の学校に行くことはできない。

 私の通う第一は、勉強の機会に恵まれた貴族なり裕福な家庭なり、また庶民でも飛び抜けて優秀な者が集まるところだった。

 第四まではそのレベルに準じ、第五は芸術方面特化、第六は特殊技能特化とされている。

 第一と第二を卒業した中には、その上の高等専門学校へ進み、医師や科学の道へと進む生徒も居るということだ。


「で、面白いのは第一と第二はそれなりに仲が良いのに、第三と第四は常にいがみ合っている、ということなのよ」


 同室となったリューミン・ローダンテ北西辺境伯令嬢はくすくすと笑いながらそう言った。 


「何故?」

「そりゃ、第一と第二は能力がそれなりに高い、と認められたからこそ色んな人が入ってるけど、第三と第四は大概貴族の中でも出来の悪いひとばかりだからね」


 可愛い顔して辛辣なことを言う。

 確かにこの第一は、特に様々な生徒のたまり場でもあった。 

 優秀であるならばどんな者でもで特別奨学生になることができる。

 寮費は無償、奨学金も不祥事を起こして退学にでもならない限り、基本は無返還となっている。

 それを狙って、下は十三、上は十八までに門戸が開かれている。


「私のお姉様もここの出身なんだけどね、その時はお姉様が十三で、同室が十八の方。相手は本当の本当の庶民で、ただただパンづくりのための研究をしたいがために必死で仕事の傍ら勉強したってひとなのよ。いやもう、彼女がたまに作ってくれるパンは美味しかった、ってお姉様はよく言っていたわ」

「へえ…… で、その方はその後は?」

「その上の科学専門学校へ見事やはり特別奨学生となられて、発酵する菌の研究をなさって保存食に関する論文で博士号をもらったそうよ。保存食は私の地元では凄く大事だから、お姉様も連絡は取り続けて、支援と北での食生活改善に協力してもらったそうよ」


 楽しそうに彼女は姉妹のことを話す。


「……って、そのお姉様、今もう幾つ? リューミンは何人きょうだいなの?」

「十人。私のお母様が四人、他のお母様から三人と一人と二人かな。元々うちの辺りでは、子供が小さい頃に死にやすいから、沢山作れる時には誰でもいいから作っておけ、という風習なの」

「へえ……」

「確か北東辺境もそうじゃなかったかしら。寒いところはそうなりがちね」

「いや、暑い場所もそうではないと思うよ」


 そう言いながら、右隣の部屋のキリューテリャ・モリゲ男爵令嬢が果物のかごを手に入ってきた。


「え~うちから送ってきた果物。箱一杯だったからもうすぐに分けてしまわないと傷みが激しくなるし!」

「いい香り~」


 リューミンは籠を受け取るとふうっと猫の様に目を細めた。


「ですよね! 南西の果物って本当に甘くって美味しくって香りも良くって」


 そう彼女の後から入ってきたのはキリューテリャと同室のヘリテージュ・トリオル侯爵令嬢。

 同じ日に入寮したことで、私達は一足先によく話す様になった。

 左隣には爵位は無いが財団の娘エンジュ・メンガスと、特別奨学生で二つ上のセレ・リタが居た。

 私はここで主に彼女達と五年間暮らすこととなった。

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