7 支線列車で帝都の女学校へ向かう

 そしてその三年後、私は帝都にある全寮制の女学校に入ることになった。

 私が住んでいたウッドマン伯爵領は、帝都から支線鉄道で南西に一日程度のところだ。

 いくら鉄道が全土に渡った時代とはいえ、さすがに十三、四の伯爵令嬢を一人で行かせる訳にはいかない。

 ということで、一等車の個室に私とポーレ、それに二等車に送りきれない荷物持ちとしてフットマンのゲオルグが一緒になった。

 ゲオルグは背が高く、力の強そうな男だ。


「私本当にこっちでいいんですか?」


 ポーレは私に尋ねた。


「乗車券を取ったのは家なのだからいいんじゃない?」


 私はそう答えた。


「帰りは二人して二等だそうですけど、二等だって大盤振る舞いって感じなのに」

「出してくれるって言うならば、楽しみましょうよ」

「テンダー様がそれでいいならいいんですが……」


 その時のポーレはどうもお尻の座り心地が悪い、という感じだった。


「いいじゃない。これでしばらくポーレに会えないんだもの。じっくり夜を明かして話したいわ」

「テンダー様あ……」


 そう言ってポーレは涙ぐむ。

 正直、家から離れることに何が辛いかと言えば、やっぱりフィリアとポーレと離れることだった。


 少し前にシャリレージ先生は辞めていった。

 アンジーの家庭教師は何度か替わっていたが、それでもやっぱりシャリレージ先生は怖くて嫌、なんだそうだ。

 私は駅まで先生を送っていった。


「貴女ならきっと寮生活でも上手くやっていけると思います。ただ以前言った様に、貴女には意識のずれが確かにありますから、そこは気をつけてくださいね」


 彼女は念を押す様に言った。


「はい先生」

「それと、沢山きょうだいが居る友達をぜひ作ってくださいね」

「はい。そして長期休暇にそこに泊まりに行けるくらいの」


 そう、と先生は頷いた。


「先生もああ言われたことだし、きっとテンダー様がお帰りになることはあまりなくなってしまうと思うと」

「それはあるかもしれないけど、それでもちゃんと祝日休暇の時とかには戻るわよ。それに学校時代ってそう長いものではないと思うの」

「その間に私も一人前のメイドになって、テンダー様付きになれる様にしておけばいいんですね」

「そうよ。だって私の側で世話してくれるのは、一番一緒に居たポーレだもの」

「テンダー様あ」


 また涙涙。



 帝都総合中央駅から馬車を拾い、三人で女学校まで。

 その門を入るまで、窓の外を三人してこれでもかとばかりに目を見張っていた。

 何て皆伯爵領から出たことが無い者ばかり。


「テンダー様あ、できるだけお帰り下さいよぉ……」

「手紙書くわ。書いてね」

「……何か友達同士の別れみたいですな……」

「確かに私の御主人様だけど、まず幼馴染みですもの仕方ないでしょ」

「そう思えるもんかねえ」


 ゲオルグはそんな私達の姿を首を傾げながら見ていた。

 それから私の学校生活が始まった。

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