25 居ない間の妹の所業①
「ちなみに何だってそういう話になったの?」
判る範囲でいいから、とうながした。
「……テンダー様が学校に入学されてから、私達が良く遊んだ庭園によくアンジー様が入り込む様になったんですよ」
「あれ、あの子花になんて興味あったかしら」
「無いです。どうも奥様に連れて行かれたお宅で豪勢な庭園を自慢されたそうで、じゃあうちは一体どうなんだ、といきなりジョンさんに聞いてきたんだそうで」
ジョンというのは庭師のことだ。
「今までまるで足を踏み入れたことのない方の可愛らしいお嬢様が入ってきたので、見ての通り、といつもの様に――私達に言う様に返したら、いきなり『何なのその返し方は!』と怒鳴ってきたって言うんですよ。いやもうジョンさんびっくり。いや、他のお宅では確かに庭師には横柄なのかもしれませんよ。でもうちの場合、ほら、テンダー様でしたから」
「あー……」
私にとって庭師のジョンは気のいい小父さん程度の感覚だったので、言葉遣いが多少どうであろうと別にに気にすることはなかった。
そもそもポーレにしても、おそらく気を抜くともっと言葉が砕けていただろう。
「で、またそれが奥様に回り旦那様に回り、ジョンさん今までになく怒られ!」
「何か私も悪いことしたなあ」
「へ? 何かしました?」
「いや一応私主人側だし。多少区別つけた方が良かったのかな」
「誰もそうしろとテンダー様に教えませんでしたよ? 先生だって注意しませんでしたよね?」
「先生は、うん、確かに言わなかったわ」
私達がジョンと仲良くやっているのを微笑ましく見守ってくれただけで。
「って言うか、だいたい庭師や森番というのはざっくりした言葉づかいなんですよ。これは他の家のメイド情報なんですがね」
「ポーレもずいぶんメイドとしてだんだん一人前になってきたということね」
「いやいやいやいやそれはまだまだですよ。やっと一巡りして、今はスカラリーやっています。テンダー様がお帰りになったら、お付きということで」
「ああ良かった。じゃあその間はポーレを独り占めできるのね」
「でもさすがにもう一応メイドですから、少なくとも誰か居る場所ではもう少し」
「判った、わきまえるわ。……もしかして、ポーレもアンジーから何か怒鳴られたりした?」
「あ、そうそう。それでも庭園を一巡りして、それからお茶会をこちら側でしたい、と奥様にお話なさったわけですよ。ジョンさんは今の時期やってもな、と言ってましたがね。ちょうど色々植え替えやら選定の時期だし。それに使用人達もわざわざ西に色々運ぶのも何だし、ということで何だかんだ理由つけて、本館の方にぜひ、ということになった訳です」
「あ、それで」
「ええ。で、ご当人は本館を使えるなんて! と浮かれて」
「何かやらかした?」
「はい」
大きくポーレは頷いた。
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