27 居ない間の妹の所業③
「で、ともかくそれでも足りない食器やクロスは似たものを探して、花も季節のもので何となくそれっぽくして、同じくらいのお年頃のお嬢様方をお招きしたんですよ」
「それで? 上手くいったの?」
何かもの凄く気になる。
「そんなことある訳ないでしょう!」
思わず彼女は両手のひらを上げてみせた。
「って言うか、まず同じくらいのご令嬢が来るということは、皆さん同じ本を読んでいるんですよ。そこで賢いお嬢様は、それを基本に自分らしさとか応用していくのですが、アンジー様のそれは、もろ『真似してみましたが失敗しました』なんですよ。それが他のお嬢様方もお解りになるので、私より一つ二つ小さな方々でも、まあ既に遠回しな嫌味を綺麗な言葉の中にがんがんに入れていたそうです。ところがアンジー様、それがお解りにならない」
「嫌味が通じない」
「そうなんです」
ポーレは神妙な顔で頷いた。
「解っているお嬢様方はにこやかに嫌味を言ってるんですね。でもアンジー様は全部誉められていると思って、何とかその場は終わったんです。ところが周囲のメイド達が悔しがっているのを見て、何があったの、と尋ねた様で。そこでようやく嫌味だらけだったということを知ったら」
「知ったら?」
「『何でこっそりとでも教えないの!』とメイド達をなじるはたく蹴る、ですよ」
「えっ、手も出したの?」
「はい。で、それからというもの何か堰を切った様に、手が出る様になってしまったんですよ」
あらら、と私は唖然とした。
「お母様はそれに対して何もしないの?」
「奥様は奥様で、注文したものが来なかったのが悪い! アンジー様に恥をかかせたのはどうもメイドや庭師が悪い、ってことになってしまっている様ですよ。先輩方曰く、それまで可愛らしいアンジー様をあちこちのお家に連れ回して自慢していたから、余計に傷つけられた! と、今度は奥様付きのメイドにも最近は当たる始末」
「……だったらそもそもお母様がちゃんとその出来を見てやれば良かったじゃないの?」
「全部自分が選ぶ! というアンジー様の気持ちが大事だったそうですよ。だからメイド達も口を挟まなかったのに、と皆ぷりぷりしていました」
「それまではそんなこと無かったのかしら」
「ちやほやされている分には問題なかったんじゃないですか? あ、でも、今花飾りの作り方を教えてもらっている先輩の話では、テンダー様と違って縫い物の先生からの課題を押しつけられたことがあるとか」
「じゃ、自分ではできないの? 刺繍とか必要なのに」
「何でも習いだした最初の頃、針を指に刺したらしいんですね。それ以来『針仕事なんてメイドがすればいいんだわ!』と初心者らしく代わりにやっておいて、と言われたらしいです」
「……本当に相変わらず勉強嫌いなのねえ」
ちょっとここまで来ると感心する。
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