23 祭りの後に少し変わったこと

 そして合同祭は、盛況のうちに終わった。

 ヒドゥンさんはもうそこいらの女を超越した美しさで、それこそ第一の女子がうっとりするやら自信を無くすやら。

 マリナさんのゆったりとした美男子ぶりには本物の男より黄色い声を上げる第一の女生徒も居たし…… 

 第五の男子も「あのひとになら抱かれたい!」「踏んでください!」などとなかなか訳の分からない声を掛けていた者も居た。

 相手が第五ということもあって、普段なら厳しい第一の教師達も仕方ないとばかりに見逃していた。

 いや、それだけではない。

 私は見た。

 第一の教師の中にもこの逆転主役達にうっとりしていた方は居たのだ。

 そしてその後。

 普段は男女問わず外との交流が無い第一女学校も、少しの出会いはあった様だった。

 脚本担当の一人となったエンジュは、脚本の形というものを教えてくれた第五の男子生徒と文通をし始めた。

 セレには第五の女子から「また今度出演して頂戴!」という手紙が沢山来た。

 当人は「やなこった」と、それでも全てに返信しているだけ律儀だ。


 ちなみに私は何故かヒロインをやっていたヒドゥンさんと手紙を交換している。

 と言うのも。

 このひとが叔母様同様「卒業は近いけど、俺結婚する気は無いなあ~」と口にしていた時、つい「そーですよね」と反応してしまったのがいけなかった。


「何で?」


と重力の無い声で聞いてくるので。


「よく分からないんで」

「何が?」

「両親が一緒に仲良くしてる姿見たのが殆ど無いんで、自分がそれで上手くやってる図が想像できないんですよね」


 そう返したのだ。

 すると。


「あー奇遇だな俺も」


とその綺麗な顔でぽん、と言った。


「え、ヒドゥンさんも無視されてたんですか?」

「も? あれ、キミもずいぶんな家に生まれたねえ」

「いや無視されてただけですがー」

「そっかだったらまだいいかもね。俺さあ、ともかく家庭教師に襲われまくっててさー。いや俺生まれつき可愛いっていうのでね」


 いやそれ笑い事じゃないでしょ、と私は言いかけてやめた。

 どうやら私の境遇も傍から見れば笑い事ではないらしい。

 のだが、当人からしたらどうなんだろう? ということは往々にしてある。

 だからこう返した。


「そーですか。まあちゃんと今元気に生きてるんならいいんじゃないですか?」


 するとヒドゥンさんはにいっ、と口元を上げた。


「キミなかなか面白いなあ」

「人のこと言えた義理ではないと思うんですが」

「いや、俺が会った中で一番面白い。だから、キミ、もし三十になっても結婚してなかったら俺としない?」


 はあ?

 思わず私は目を丸くした。


「や、俺ウチから見放されてるし。キミにはきっと縁談が来るだろうけどな。それでも何やかんやで色々おじゃんになった時になーんとなく居心地悪かったらな」

「そんなまだ遠い話を」

「うん、だから文通からよろしくー」


 そんな経緯で私には文通友達ができてしまった。

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