37 妹が第四に来るだろうことを聞いて
冬にもあまり帰らなくなったら、ポーレの手紙攻撃が酷くなった。
ごめん、仕方がない。
「あれほど冬は戻ってきて欲しいと言ったのに……」
涙涙の訴えはあったのだが、それでいて頼み事は聞いてくれる辺り、やはりありがたいというか感謝せずにはいられないのが乳姉妹というか。
「ええ今回もお帰りにならないのですね!
いいですよ。テンダー様は色々お忙しいし!
とはいえ、学内の自治組織というもの? の幹部に就任の件はおめでとうございます。
第一女学校でその役に就くということはやはり凄いことだ、と噂に聞きます。
さてお尋ねのあったアンジー様のことですが。
やはりどうがんばっても第四女学校、とのことです。
当のアンジー様は『お姉様が第一に通っているというのに私が何で第四なの!』としばらくじたばたしてましたが、第一よりずっとずっとずっと勉強は簡単だ、ということを聞いたらあっさり静かになりました。
相変わらずピアノの曲はねじれてますし、最近では歌もその傾向にあります……
向こうの家庭教師の先生からは、使用人二人を間に置いて聞いた結果、『ようやく基礎が何とかなった』そうです。
持っていた読本と文法の教本のタイトルは、私が教わった最後の年のものでした……
ダンスは充分お上手とのことです。
そして社交に関しては無闇に打たれ強い様です。
自分で開いたお茶会には失敗したにも関わらず、あちこちに誘われれば出かけていき、上機嫌だったり不機嫌だったりの波は大きいのですが、欠席することはありません。
そして帝都の女学校に行くこと自体は自慢している様です。
当初悔しがっていた第四への進学も、帝都に行ける、ということの方が周囲のお嬢様方に対して優位に立ったと思えることなのでしょうね。
皆様ご実家のお手伝いなり、お体が弱かったり、早めのご結婚の用意とかでここいらでは行かない方もいらっしゃるので。
最初から帝都近郊にいらっしゃるなら何ですけど、こちらですものね。
使用人達は皆、五年間は楽できる! とばかりに作業場でその日を待ち焦がれています。
ええ、アンジーお嬢様のお付きのメイドすら!」
そんなポーレの手紙を読んでいたら、後からリューミンに背後を襲われた。
「何~? 妹さんが第…… 四……?」
「こらこら勝手に見るものではない」
「いやまあ、貴女が帰らない元凶でしょ? 来年第四に来るなら気になるわねえ」
そうでしょ皆? とリューミンは同意を求める。
「うん、どれだけ違うのかは気になる」
とセレ。
「六年間家庭教師に教わって三年間の課程しか身につかないのか…… まあでも第四ってだいたいそういうものよね。しかも敷地が第四の男子校と近いのよ」
そんなヘリテージュの言葉に皆驚き。
「何で! そんなところに置いたら問題起こしなさいって言ってるみたいなものじゃないの!」
そういう意味のことを口々に言っていたのだが。
「だからそれが狙いなんですってば。問題起こしたら退学にできるじゃない。さりげなく壁の穴は塞がないとか、色んな伝説があるみたいよ。寮の規則はうちより厳しいみたいだけど」
厳しいと脱走する人が増えるのよね、とヘリテージュはくすくすと笑った。
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