36 皆でまとめて自治組織の幹部に

 二年と三年の日々というのは、同じことが繰り返されてはいても、少しずつ違うことで面白い。

 のだが。

 ふと気付いた。

 合同祭のことだ。

 一年時には第五と。

 二年次には第二と。

 三年次には第三と。


「……今年これだけ苦労したというのに、来年はきっと……」

「ちょっと考えただけで恐ろしくなるわ」


 来年はこの分だと第四と組む羽目になるだろう。

 しかも、卒業学年ではなく、四年になる私達が中心になる。

 そう、三年の途中から自治会幹部にならないか、という誘いが皆にかかった。

 学業の善し悪しで決まる訳ではない。意欲と適性が物を言うらしい。

 前者はまあ、見たそのものだが、後者。


「総代に求められる適性は、何と言ってもその場を鎮める力だ」


 確かにそれは一理あった。

 最初の年の総代は、実にあっさりと烏合の衆を黙らせたものだ。

 翌年翌々年にしても、そのやり方はどうあれ、視線を自分に集中させ、話を聞く体勢にできる者に適性があるらしい。


「だったらセレがいいわ」


 ヘリテージュはそう言った。


「嫌なこった。そんなことしていたら勉強時間が削られるじゃないか!」

「でも目立つし! だいたい貴女最初にあんな役やったから、それから二回の合同祭もそういう役回ってきたじゃない。おかげで下級生に貴女のファン多いのよ」


 セレは口をへの字に曲げた。

 それに関しては彼女も否定できない。

 ともかく毎度毎度その長身と体型、低めの声が買われて、劇やダンスとなると男役を依頼されるのだ。

 結果、新入生や、合同祭の相手校からのファンレターがやってきて――年々増えているのだ。


「それだけでも何なのに更に?」

「でも総代やったっていうのは進学に箔がつくわよ。それに学会発表とかする時にも度胸がつくし」


 む、とヘリテージュのその言葉にはセレも押し黙った。

 他のポストならともかく、総代をやったというのは大きい。

 試験の成績が同じだったら、確実に総代をやった側を採るだろう。

 そして研究を続けるにしても、どれだけ説得力のある発表ができるのか、は大切だ。

 無論、研究した結果だけで認められる者も居る。

 だがそれは滅多に居ない。

 大概の研究者ができる範囲は決まっているし、それをまた実践に応用してもらうためには売り込みをするための度胸と口は必要なのだ。


「いいじゃない。別に会計とか書記とか庶務とかの実務じゃなくて、それを如何にまとめて伝えて抑えるか、ということだもの。細かいことなら、それこそ私達が応援するわ」


 セレはそうやって次期総代に引っ張り出され――

身近な私達は、その実務側に引っ張り出されることになった。


「これが社交というものか……」

「絶対私達こういう点ではヘリテの足元にも及ばないわ……」


 そして三年の冬の休暇は、私とリューミン以外もぎりぎりまで寮に残ることになったのだ。

 正直私は次の年からは目立ちたくはなかった。

 そう、合同祭の相手方は第四。

 ……あの子がやってくるのだ。

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