21 舞台衣装の話と男女逆転主人公達
「元々私、服を作るのが好きだったのよ。祖父母のところは実家ほど裕福ではなかったから、器用な祖母自身がやっぱり器用なメイドと一緒に流行を取り入れた服を生地から選んで作ってくれたりしたの。で、私も見よう見まねからだんだん覚えていってね。お針子として通用するかは判らなかったけど、ともかく出てみたかったのよ」
「そうだったんですか……」
それは冒険だ、と私は思った。
「今はファタクス師から、ちょっと俺の代わりに講師やってきてくれ、って言われてここに来ているの」
「じゃあ今はドレスメーカーとして」
「それもあるんだけど」
ふふ、と彼女は笑った。
「師は元々女性のドレスだけでなく、演劇の衣装も手がけていたのね。ただそっちにかまけると本業ができなくなる。その上講義まで、となると…… ってことで、私が使われたって訳。実際私が師の元で今は一番演劇用の衣装に関しては詳しいからね」
「凄いですね……」
「凄いというか。結婚させられるのが嫌だったのよ。で、必死になってみただけ」
そう言って茶をすする。
「見てみる? 舞台衣装っていうのは、夢があるわよ」
*
それからというもの、私は時折叔母の元に出向く様になった。
と言うか、叔母という人が居るから、第五に顔を出す様になったとも言えるが。
第五は本当に様々な人材の集まりだったが、今回の男女逆転演劇においては、男子校側の独特な人とも出会うきっかけになった。
そう、特に今回の主役達。
女学校からはマクナ・イリギタンという南方から来ているという生徒が選ばれた。
セレも相当長身だと思うが、色が浅黒い彼女は、それ以上だった。
巻き毛の黒髪に黒い目、細くて長い手足。
普段も校内演劇では男役か、ひょうきんなキャラクターを演じているらしい。
「そもそも私のこの身体では、普通のドレスは似合わないからね」
そう。
ともかく女性のドレスというものは、遠くから見た時に砂時計型になる様にできているのがここ百年程の流れらしい。
「演劇だと、もっと昔の衣装とかをまとうことがあるから私でも似合うものがあるんだけどねえ」
過去の講演を生徒が絵に収めたものを見せてもらうと、確かにそこに出てくる衣装は私達が常日頃見る形とは異なっている。
特に、古典劇のそれは、何って美しく、そして楽そうだと。
「まあねえ、俺も女役の時にはコルセット締めなくちゃならないからね」
男子校からのヒロイン、マクナ嬢の肩くらいしかない、ちょっと異様なくらいに小柄な子爵令息ヒドゥン・ウリーもおどけて言ってみせた。
何でも彼は既に十八になるにも関わらず、小柄で華奢なまま成長が止まってしまったのだという。
その上整った顔立ちときたら。
「いやあ、おかげで喧嘩が強くなってしまったわ」
とその綺麗な顔でからからと笑う程だった。
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