80 ドレスの流行の話について婚約者の親戚に聞いてみた
そしてデルデス伯爵から紹介してもらい、クライドさんの従姉妹の方々を集めたお茶会に参加することになった。
四阿を利用したお茶会は、季節の花の香りがお茶の香りを壊さない程度にかぐわしく漂ってくるものだった。
「見事なお庭ですね」
「本当に私もそう思うわ」
「ここのお庭は伯母様が丹精込めて整備させていてね」
「薔薇園にはいつの季節にも花が咲く様に品種を」
等々、総勢十五人の令嬢や夫人が砂時計型のドレスをまとい、勢揃いした。
一人で参加してみると思うのは、彼女達と、それまでの友人達の違いだった。
皆とても美しい。
そしてよく似て見える。
「それにしても、ウッドマンズ家のお嬢様が思った以上にきちんとした方で安心致しましたわ」
そう言ったのは、おそらく一番歳上の某子爵夫人。
私はそれには曖昧な笑みで応えた。
「いえね、ずっと聞いていたのですよ。あの家の可愛らしいお嬢さんは、帝都へ出たら大変なことになってしまった、と。でもそれは昔からだと、私なぞは思うのですがね」
「そうですわ。そもそもあのケイティ夫人が連れ回していた頃から、その気配はあったのですがね。そっちのお嬢さんでなくて、本当に良かったと思いますよ」
「……妹は、昔から?」
これもまた、曖昧に問いかけた。
私は母に連れ回されていたアンジーを知らない。
「ええ。妹さんのことをこういうのは何ですが、……何でしょうね。確かに顔はとても可愛らしいのですが、マナーが……」
「そう、本当に顔は可愛らしいのですが……」
「ドレスも似合ってはいたのですわ。どうも常に流行の最先端を、とケイティ夫人ががんばって仕入れていた様ですわよ」
「ケイティ夫人もいつも流行の最先端を、とがんばってらした様ですが」
「でも、流行だからと言って似合うものと似合わないものがありますのに」
くすくす、と夫人や令嬢達は笑う。
「その件について一つ皆様のご意見を伺いたくて」
「お母上と妹君について?」
若い一人がにっと猫の様に笑った。
「いえ、ドレスの流行の話です。何故ずっと砂時計型の体型になっているのだろうと。コルセットでこうぎゅっと締めて」
皆様方は顔を見合わせた。
「実は叔母が帝都でドレス工房をやっているのですが、コルセット無しでも美しいドレスをずっと思案しているのです」
「……それはちょっとはしたないことではなくって?」
夫人の一人が扇を半分広げながら、怪訝そうな顔をした。
「何故でしょう?」
「率直な方ですこと。お勉強はとてもできる様ですが、そんな初歩のこともお解りにならない?」
お、これは。
彼女達は私に対して決して友好的ではないことに気付いた。
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