第21話 ジェルの復讐? レオの怒り?
「それでどうだった?」
シズクはジェルに笑みを向ける
「なんの……ことだ?」
「決まってるだろ? 復讐からは何も生まれないって真顔で言い出しそうなお前が、復讐ってやつを果たした感想だよ」
シズクの笑みは獰猛な物に変化した。さらに続ける。
「そんなの興味が沸かないはずがないだろ。さぁ聞かせろよ」
そう言われたジェルは自然にシオンを見る。
「俺は、今でも復讐からは何も生まないって思っているさ」
「けっ……つまらない答えだ」
「……けど」
「ん?」
「気に食わない奴をぶん殴るのと同じくらい爽快感は得た」
「はっはっは……そりゃそうだな。すまん、当たり前の事を聞いちまったみたいだぜ」
シズクは「さて、これからどうする」と訊ねる。
「これから……シオンを倒したんだ。俺が生きて戻ってきた事はレオたちも知るだろう」
「やっちまうか?」
「彼が、その気なら……俺はもう逃げない」
「そう来なくちゃ! それじゃ宣戦布告と行こうぜ!?」
「宣戦布告? 何をするつもりだ?」
「ちょっと、貸してくれよ。名刀 コテツ」
「……変な事に使うなよ」
「いいかい? こういう矜持が高そうな女はこれが効くんだ」
シズクは借りた名刀コテツを振るった。
狙いは――――シオンの手から離れた彼女の愛刀。
それは叩き割った。
「それから、これを」と、何から懐から道具を取り出す。
それは、普通の紙とペンだった。
「何をするつもりだ?」とジェルの言葉にシズクは悪い笑みで返した。
翌朝 気を失ったシオンが発見される。
まるでミノムシのように体は縄で縛られ、木に括りつけられていた。
足元には彼女の愛刀が叩き折れていた。
そして、彼女の胸に紙が貼り付けられていた。その内容は――――
『この者、まだ未熟者ゆえ 復讐は続く』
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
冒険者ギルドの話題は1つだった。
B級冒険者であるシオンが立ち会いで敗れ、木に括りつけられていた。
何者の仕業か?
それ以上に、酒が入った冒険者たちは尾びれ背びれをつけてゲスな噂話に変化させていく。
「おいおいシオンの奴、本当は裸で縛られていたんだってな」
「はっ! ソイツは是非にも拝みたかったぜ」
「かっ、たまらねぇぜ。私はお前等と違うって俺たちを見下してアイツの無様な姿。想像するだけで」
「アイツ、顔だけは上玉だからな。そもそも、そういう性癖だったんじゃねぇの?」
そんな下品な言葉が飛び交う中、魔法使いのドロシーは冒険者ギルドの中を進む。
レオにシオンについて、それから今後について話をするため。
(こんな中にレオがいるの? みんな、シオンの事を馬鹿にして――――)
しかし、彼女は徐々に違和感に気づいた。
冒険者ギルドの真ん中。 そこに近づくにつれて、他の冒険者たちはシオンの話を止めていった。
なぜか? ドロシーは気づく。
レオがいる。 ただ、座っている彼。
しかし、凄まじい圧力を感じる。 それが、周囲に伝播して、他の冒険者たちの口を噤ませているのだ。
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