第10話 剣聖セットの力

 ジェルの頭に、そした体に剣聖の技術が染み込んでいく。


「こ、これが剣聖の力」と剣を構える。


「今までは、自己流の冒険者剣術。これからは――――」


 手にした二本の刀――――コテツとムラマサを振るう。


『虚空斬撃翔』


 斬撃が飛ぶ。


 魔力が乗った不可視の斬撃が、剣先を越えて飛んでいく。


 離れた場所。迷宮の壁に大きな斬撃の跡が残った。


 さらにジェルは前に駆ける。 狙いは、再び迷宮の壁。そこに向けて――――


『天魔六乱舞』


 高速の6連撃。


 二刀流による一振り。その速度で6つの刀傷が壁に刻まれた。


 まさに高速の剣撃だ。 


 次の奥義へ。ジェルは後方に下がる。


 最後の技は突進技だからだ。


『土龍激突』

 

 刀を前に構えての突進。


 腰を落とし、低い体勢から足を踏み込む。


 以前のジェルには有してなかった突進力。 


 巨大な四足獣の力強く前進して、壁へ激突。


 2つの奥義


『虚空斬撃翔』


『天魔六乱舞』


 その刀傷とは明らかに違い、壁に巨大な穴が開いた。


「凄い……本当に手に入れただけで伝説の技を俺が……」


 感動 


 興奮の熱が背中から昇っていくような感覚だった。


 ジェルは、その伝説の技を再現した二振りの刀を見る。


『妖刀ムラマサ』 


 対人特化武器。人型魔物に高い効果を有する。


 その刃を見た者を魅惑し、精神の錯乱を誘発させる。


 手元から離れても、所有者の意思を感じると飛んで戻ってくる。


『名刀コテツ』


 対人特化武器。人型魔物に高い効果を有する。


 武器破壊及び防具破壊が可能。

 

 こちらの攻撃を防御した武器及び防具を一定の確率で破壊する。


「この武器と技さえあれば俺はどこまでも高く上り詰めれる……けど、どうするかな?」


 ジェルが視線を向けたのは古代魔道具の前に置かれている二本の刀と奥義書。


 今、ジェルが手にしている『ムラマサ』と『コテツ』と同じ物だった。


「まさか、10連で当たりを2つ引くなんてなぁ……」


 ジェルが『剣聖セット』と当てた直後、10連中にもう2つ目の『剣聖セット』を当てていたのだ。


 これを2枚抜きと呼ぶ。


(まだ冒険者を続けるなら新しい仲間を作って譲渡するべきだろうか? しかし、俺は、この古代魔道具を秘密にしたいのだが……)


 ジェルは考える。 


 今は仲間に裏切られたばかり…… このまま冒険者を続けるにしても当分は1人で活動するつもりだ。    

 

 もし、仲間を作るとしたら、本当に信頼できる人間にしたい。


 ジェルはそう思っていた。


「う~ん」と悩んでいると、古代魔道具のジハンくんが喋り出した。


『お客様、剣聖ガチャで当たりが複数出されました場合。特別に融合する事が可能です』


「……融合?」 

 

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