第11話 迷宮脱出前に出会い

 融合


 ガチャの当たり商品である剣聖セット。


 それを融合する事で剣聖セットの効果は上昇する。


 古代魔道具はそう説明した。


 例えば――――


『虚空斬撃翔』は剣撃の飛距離が上昇。


『天魔六乱舞』は切れ味と剣速が上昇。


『土龍激突』は破壊力の上昇。


 さらに剣士の基本的な技術と体術が向上。


「どうしようか?」と考えていたが、結局は……


『おめでとうございます 剣聖セットは最高上限のレベル5になりました』


 ジェルは『剣聖ガチャ』を最高上限まで融合するほど、金を払ったのだった。


・・・


・・・・・・


・・・・・・・・・・


「後悔はない」


 そういうジェルの言葉に嘘はない。 


 奥義書によって剣聖の技を振るった瞬間、確かに体が震えるほどの感動があった。


(だが、それより上の領域があった。今の俺は――――)


「ドラゴンにだって勝てるかもな」


 そう呟いて笑った。


(嗚呼、思い返してみたらいつ以来だろうか? 少しでも笑う機会がなかった)

 

「もう少し、早くレオたちから離れたら良かったかもしれない」


 吹っ切れた。そう言い切るには、まだ重い感情が残っているけど……


「さて……」とジェルは今の現状を確認する。


 剣聖と技と『妖刀ムラマサ』と『名刀コテツ』は確認するまでもないが……


 魔力は、『魔力増加』を購入した事で、一流の魔法使いの3倍まで跳ね上がっている。


 刀の主要武器とは別に補助武器として選択したのは杖。


『炎氷の杖』


 火球を放つ魔法のファイアボールに加え、氷の刃を放つホワイトエッジ。


 ジェルは、その2つをマスターしている。 『炎氷の杖』は、相反するその2つを強化してくれるという珍しい二重属性の杖だ。


 上に羽織ったマントは――――


『吸魔のマント』


 装備しているだけで周辺の魔素を吸収。僅かだが魔力を自動で回復してくれる。


 取得した魔法は前記の『ファイアボール』と『ホワイトエッジ』に加えて、飛翔魔法の『フライト』


 松明の代わりに光源となる球体を飛ばす『シャイニング』


 『シャイニング』は魔力を調節すると輝きで目潰しにも使える。


「他にも珍しい素材。まだ試してない魔法や武器もあるけど、大切なのは今だ。この迷宮で1人で脱出するには必要な魔法や装備はこれで十分……のはず」


 この部屋を出たら、ゴブリンの軍勢がいる。


 少し不安になる。


「……本当に脱出できるのか?」 


 人間離れした剣聖の技。 広範囲高威力の魔法。


 それらを補助する武器や防具に道具。だが――――


 それを持ってしても相手は100匹のゴブリン。それも統率が取れているゴブリンの軍勢だ。


 真正面からぶつかって勝てる保証は―――― そのジェルの思考は乱れた。


 なぜなら、人の気配を感じた。 誰かが、この部屋に入って来たのだ。


「だれだ!」と叫ぶジェル。 暗闇の中、相手は「……」と返事を返さない。


「――――っ!(使ってみるか? シャイニングでの目潰し。それから剣聖の技を連続で)」


だが、相手は暗闇から姿を現した。それにより攻撃のタイミングを外された。


相手はマントに付いた頭巾を深く被り、顔を隠している。 


「やぁ人間、生き残ったみたいだなぁ。それでその古代魔道具を試したのか?」


「君は――――いや、お前は誰だ?」


「おいおい、忘れたのか? 一度、私の顔を――――この目を見たはずだけどね?」


 相手は頭巾を取り顔を見せた。 


 見覚えのない顔。しかし、その瞳は――――赤かった。       

 


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る