第47話 魔法とワイバーン討伐

 魔法


 この世界において、魔法の才能。


 まずは魔力の有無。

 魔力を有せず生まれた者は生涯、魔法を使用することは不可能……少なくとも、そう信じられている。


 魔力0に生まれるか、魔力1と生まれるかが絶対の壁。

 

 そのため、魔法使いたちは子供へ魔力を継承させる可能性を高めるため、魔力の総量を増やす修行に邁進する。


 魔力量が多ければ多いほど魔法使いとして優秀とされる。


 それは魔法使いとしての戦闘方法にも反映。


 魔法使いの正道たる戦い方は2種類――――


 膨大な魔力を執行して、魔法の雨霰。大量の攻撃魔法によって、接敵を防ぐ。


 あるいは、魔力を集中させて放つ一撃必殺の魔法。これを極めし者はドラゴンすら倒しきると言われている。


 倹素を好まず、豊潤な魔力を豊潤なまま使用する。


 これが魔法使いである。



 だが、奇しくも魔力を持たず生まれた少年にも魔法の才と呼ばれるものを有していた。


 それは正道たる魔法使いの才能ではない。膨大な、豊潤な魔力ではない。


 言うならば精密性。 


 ジェルは『雷撃上昇の魔導書』を使用する。


(雷属性の魔力が全身を囲む……まるで体が雷にでもなったかのような感覚。これをそのまま――――シズクに明け渡す!)


『属性付加』


 戦い前に交えた打ち合わせは一言二言のみ。 しかしながら、戦いに飛び出したシズクに『雷撃上昇の魔導書』の効果を強化魔法として付加させたのだ。


 『雷撃上昇の付加』 


 飛翔魔法を執行してたシズクは、高速で舞い上がる。加えて、ワイバーンの滑空攻撃を防ぐためにジグザクに飛行。


 そのシズクに対して、地上から正確に強化魔法を与えれるジェルの精密性コントロール

 

 それは既存の価値観。 魔力の総量こそ魔法使いとしての才能――――それまでとはまるで違う天才としての適格。


 それはさておき――――


「いいぞ、ジェル。私の力が増していく感覚……これなら穿て――――」


雷光の槍ライトニングジェベリン


 魔力が具現化された槍となる。その名の通り、雷の槍だ。


「行けっ! 食らうが良いワイバーンどもが!」


 その言葉に応じて投擲したシズクの魔法が変化する。


 一本の槍は二本へ。さらに二本は―――――


 空を覆うほどのワイバーンと同等の数に増えていく。


 雷の速度は、空を我が物とするワイバーンたちより――――遥かに速い。


 その光景は、地上から振り上げられた雷が天空へ落ちていくように見えた。

    

 雷光の槍に撃ち抜かれたワイバーンたち。 黒く焼かれ、次から次へ落下していく。


 おそらく、回避できたものは1匹もいないだろう――――そう思えた次の瞬間だった。


 地上から見ていたジェルが叫ぶ。


「シズク、まだだ! まだ1匹残っている」


 膨大な数の群れから、ただ1匹だけの生き残り。 ソイツは雷の速度よりも速かった。


 その存在に気づいたシズク。


 迎え打とう構えるも、表情には僅かに焦りのようなものが覗いていた。

 

 では、その存在とは?


「――――ッ! コイツはただのワイバーンじゃない。特別怪物エクストラモンスターだ」 

 

 シズクは地上のジェルに聞こえるように叫んだ。

 

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