第90話 ジェルたちの『北国迷宮』攻略
一方、ジェルたちは――――
「ここが入り口じゃ、『北国迷宮』はここから入る」
ドワーフのトムに案内され、目的地である『北国迷宮』に到着した。
「ワシの案内はここまでじゃ、流石に中まで案内はできぬ。 何かあったら、お主等の拠点から10歩ほど離れた場所にワシの小屋がある。そこへ来るがいい」
そう言うとトムは、ジェルたちから離れ『北国迷宮』に背を向ける。
しかし、彼は「ん?」と足を止めた。
「この中は、外部からの光が乱反射しており、日が昇っている時間帯は暗くならんぞ」
どうやら、ジェルたちが腰に下げているランタンが気になったようだ。
「これですか? これは特別品なのです。攻撃魔法と同等の効果がありましてね」
「なるほど、特殊な魔道具ってわけじゃな。年寄りにはさっぱりわからん」
そう「なるほど、なるほど」と繰り返し、来た道を戻っていくトム。
言葉とは裏腹に納得してない様子が伝わってきた。
「……事前に人に見られても、誤魔化せる言い訳を考えておくべきだったかな?」
「そうだな」とシズク。
「あの爺さんは、ダンジョンの案内人だろ? って事は、元々は有能な冒険者だったって事だ。そんな人物を魔道具なんてもので騙されるものかよ」
しかし、それは日常生活の便利用品程度の物。
冒険者として、ダンジョン攻略に用いるのは心許ない。 何だったら、簡易魔法で代用できる品なのだ。
それ以前に――――
「おい!」と魔道具扱いされた本人はご立腹の様子だった。
「貴様ら、我の事を便利道具と――――」
「馬鹿出てくるな」
ランタンから飛びだそうとする不死鳥フェニックスをジェルは、ぎゅっと押し戻した。
不死鳥の体は炎と言うよりも、高純度のエネルギーが炎に転換されていている。
だからジェルは火傷することなく不死鳥に触れるのだが……
「不敬だ! 不敬であろう!」と騒ぐ不死鳥を説得する。
「ここは人が少ないとは言え、最上位の冒険者が出入りしてる場所だぞ。簡単に姿を見せるな。大変な事になるぞ!」
「むっ! ――――では仕方ないな。だが、後で覚えておくがよい」
そう言って不死鳥は落ち着いた。
ジェルは、ため息を深く。心を落ち着かせてダンジョンの入り口に向かう。
「お前、大変そうだな。私はめんどくさいから関わり合いになりたくないけどな」
そんなシズクの軽口を無視した。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・・
『北国迷宮』の内部。
外見は、氷の洞窟。 内側は、自然の洞窟とは思えなかった。
氷でできた床には凹凸はない。 滑らかな床……油断をすれば、いとも簡単に転倒するだろう。
そこを歩くには専門の靴が必要だ。
所々で柱がある。氷の柱だが、彫刻のように整っている。
誰かが、自然の柱にノミとハンマーで彫ったのかもしれない……なんのために?
想像はできない。 そんな不思議な場所――――不思議な場所には、不思議な魔物が登場する。
「おいジェル……見ろよ」とシズクは声を小さくする。
見れば、初めて見る魔物が歩いている。こちらに気づいている様子はない。
「奇襲するなら今か……それじゃ、行くか?」
「あぁ、まずは私が魔法で先制する。そのタイミングで合わせて、ジェルは接近戦を」
「わかった。それじゃ――――」
「行かせてもらう! 『
シズクの魔力が雷へ――――そして、雷は槍の形状に変化していく。
さらに、ジェルが持つ『雷撃上昇の魔導書』の効果が、シズクの魔法を強化する。
それが、前方に魔物に向けて発射される。
ジェルは、両手に剣を具現化させる。 古代魔道具の『妖刀 ムラマサ』と『名刀 コテツ』の二刀流。
シズクの魔法に合わせて、ジェルは斬り込んで行った。
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