第135話魔王と勇者の戦い?

 魔王 ジェル・クロウ


 勇者 レオ・ライオンハート


 両方の戦いは互角だった。


 剣技、体術、魔力の総量……


 刮目すべきは────


 ジェル・クロウの成長。


かつて、才無き者として追放されたジェルが、追放した側であるレオと基本的戦闘技術で互角で戦えるようになっている。


 それは、この5年間でどれほど厳しい鍛練を繰り返してきたことか……想像するに余りある。

 

 しかし──── 2人の戦いで有利不利を生み出したのは地味とも言える対人戦闘技術。それも小技と言われる部類の技だった。


 ジェルの一撃。 それをレオは避けるだけでは済まなさい。

 

 左右に飛んで避けたかと思うと蹴りを繰り出してくる。


 よくある、つま先まで真っすぐ伸ばした足のすねで太ももや脹脛ふくらはぐを狙う蹴り……ではない。


 足首を曲げて、フックのようにジェルの足を……いや、正確には足首を蹴る。


 ダメージが目的ではなく、足を刈取る蹴り――――転倒を狙うための蹴りだ。


「――――ッ!(以前から対人用に蹴りが得意な奴だったが……うまくなっている!)」


 転倒を避けるためにバランスを整えるジェルに、レオは拳を叩き込む。


(こ、こいつ……対処が遅れる隙を突いて、あえて剣戟ではなく打撃でコチラを削って来る)


 1手、反応が遅れ始めると次の攻撃への反応が遅れる。


 これが剣による攻撃なら、防御に間に合う。しかし、レオが選択したのは剣よりも素早く、短い軌道で攻撃ができる打撃。


 通常ならば、顎を砕かれて失神は免れる威力。 ジェルが持つ魔剣からの支援――――常時、回復状態の効果がなければ意識を失い、勝敗は決まっていた。


(ならば……ならば、ここで切り札を使わせてもらう!)


 レオは蹴りを放った。 今までの転倒狙いの蹴りではない。


 ジェルの頭部を砕くための蹴りだ。 しかし――――


「これを避けるか……じゃこれは?」


 幾つものフェイントを重ねた回避不能の打撃。それをレオは試すように放つ。


 だが、当たらない。


「うん……何かしてるな、ジェル? これは新しい魔道具の効果か?」


「あぁ、その通りだ。悪いな……実力じゃまだ勝てないみたいだ」


「勝てないさ。お前じゃ俺に――――永遠にな」


「試してみるか」とジェル。 未知の魔道具が発動していく。


 レオはそうなるように挑発したのだ。 


(魔道具の使用は無限ではない。持ち主に気づかぬほどではあるが……代償がある)


 ジェルが、魔道具の収集と研究を行った5年間。 レオとて、魔道具について調べていたのだ。 


 それはまだ、彼の直感の域を出していていないのだが――――


(だが、絶対にある。それを生み出した者たちが現在に残っていないのが証拠だ。自滅しろ、ジェル・クロウ!)


   


 

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